ジャニス・ジョプリンの人生を描いた新作ドキュメンタリー映画の内側に迫る

ジャニス・ジョプリンの死後、71年に発売されたアルバム『パール』のジャケット写真。BFI London Film Festival/Image.net

ジャニス・ジョプリンがホテルの部屋で死亡してから、今年の秋で45年が経った。
彼女の死因は、麻薬の過剰摂取だった。

死後、本が出版され、アルバムの再プレスやボックスセットが発売され、オフ・ブロードウェイで舞台化された。キム・ゴードンからピンクに至るまで、誰もが男性上位のロック界を開拓した女性としてジョプリンに敬意を表し、彼女の魂の叫びは今も聴くものの心を揺さぶる。
「初めてジョプリンを聴いたのは10歳か12歳のころです」と、キャット・パワーことショーン・マーシャルは回想する。「彼女は感じたままに歌いますよね。それで、彼女は愉快な人だと思ったんです。成長してからの彼女の写真はどれも笑ってたから、いい人生を送ってたんじゃないかなって」

これまで、ジョプリンを題材にしたドキュメンタリー映画は、74年の『ジャニス』だけだったが、今年11月27日、エイミー・バーグ監督の『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』が公開された。多くのミュージシャンが一生のうちに成し得る以上のことを27年の人生に詰め込んだ、衝動的で繊細な女性としてジョプリンを捉えたドキュメンタリー映画だ。

D・A・ペネベイカーが記録したビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニーの『チープ・スリル』のレコーディングセッションやテキサスで高校の同窓会に出席するジョプリンの姿など、バーグの映画に出てくるいくつかのシーンに見覚えがあるだろう。『ジャニス』と異なり、『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』(プロデューサーは、著名なドキュメンタリー作家のアレックス・ギブニー)には、新たに行われたインタビューが収録されている。ジョプリンの家族(ジョプリンの財団を管理している妹のローラと弟のマイケルを含む)、ビッグ・ブラザーのメンバー(今年の初めに死亡したギタリストのサム・アンドリューを含む)、グレイトフル・デッドのボブ・ウェア、カントリー・ジョー・マクドナルドやディック・キャベットなどの親しい友人たちが登場する。

見どころのひとつは、ジョプリン、グレイトフル・デッド、ザ・バンドなどのミュージシャンが70年に列車でカナダを横断したツアーのドキュメンタリー映画『フェスティバル・エクスプレス』の未公開シーンだ。未公開シーンでは、ギターを弾きながら「ミー・アンド・ボビー・マギー」を歌うジョプリンをジェリー・ガルシアのギター伴奏とともに見ることができる。数カ月後、この曲のレコーディングが行われ、ジョプリンの死後発売されたアルバム『パール』に収録された。

『フロム・イーブル~バチカンを震撼させた悪魔の神父~』『ウエスト・オブ・メンフィス 自由への闘い』などの傑作ドキュメンタリー映画を監督したバーグにとって、『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』は、採算を度外視してでも完成させたい作品だった。2007年にジョプリンの財団にドキュメンタリー映画製作の話を持ち掛けてから、完成までに8年(と150万ドル)を費やしたが、ジョプリンの影響力は時とともに衰えることはなかった。「ピンクとメリッサ・エザーリッジにこの映画の話をしたとき、ジャニスのテーマがふたりのキャリアのきっかけだったとわかりました」とバーグは語る。「彼女の存在はふたりに、自分がしたいことをする勇気を与えてくれました。60年代、女性は母親か秘書になるものと思われていました。ですが、ジャニスはそれ以上のものを望んだんです」

Translation by Naoko Nozawa

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