マーク・ロンソンが語る「人生の10曲」


マーク・ロンソン feat. エイミー・ワインハウス『ヴァレリー』(2007)



『ヴァレリー』は一種の奇跡だよ。『バック・トゥ・ブラック』のスタジオ・ミュージシャンのレコーディングの時、エイミーはニューヨークにいなかった。ビザの関係か何かでイギリスに戻らなくちゃならなかったんだ。このアルバム・ジャケットのクレジットだったかCDのブックレットだったかを手に入れると、エイミーは僕に連絡してきてこう言った。「私のアルバムで演奏してるビンキー・グリップタイトについて教えてくれる?」(笑)それで、僕はみんなを連れてブルックリンに行き、初めて彼女が彼らに会ったその日にこれをレコーディングしたんだ。

僕は自分のアルバム『ヴァージョン』を仕上げているところで、『ここにいる間にエイミーと一曲レコーディングできたらすごいだろうな』と思った。そのアルバムのテーマは主にインディを扱ったものだったから、僕はエイミーに『好きなギター・バンドはある?』と聞いた。「ザ・ズートンズの『ヴァレリー』が好きだわ。彼らは私の地元でいつもこれを演奏してるの」と彼女は言った。本当のことを言うと最初にこの曲を聞いた時には「ふーん」って感じであまり感心しなかったんだけど、エイミーはこれがどんなに素晴らしい曲か知ってたんだ。本能的にっていうのかな。あのコードが彼女に語りかけ、シングル・カットした時にどれだけ素晴らしい物になるかわかってたんだね。


アデル『コールド・ショルダー』(2008年)




僕がXLレコーディングスのリチャード・ラッセルのオフィスに行くと、彼はこう言ったんだ。『素晴らしい娘を見つけたよ。アデルだ。彼女についてはすごい噂をたくさん聞いている。彼女は君に彼女のデモ・テープのこの曲を演奏してもらいたがっていて、プロデュースをしてくれるか聞きたいらしいよ』って。僕が部屋に入って行くと、彼女は1曲演奏してくれた。素晴らしかった。僕はたぶんちょっぴり欲張って『他にもなにかやりたいものはある?』って聞いた。もう1曲あるだろうと思ったのに、彼女は「いえ、これで終わりよ。あなたに頼みたいのはこれだけなの」と言った。彼女は自分のレコードで何がしたいか明確なビジョンがすでにあったんだ。僕はすっかり感心して脱帽だったよ。はっきり言って、このデモは本当にすごいんだ。ウーリッツァーを使って彼女1人で作ってるんだよ。

Translation by Kise Imai

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