9位 Bosse-De-Nage(ボス・ドゥ・ナージュ)『All Fours』


北欧人の冷酷さに対して血まみれのバレンタインカードを殴り書きするアメリカの「ブラックゲイズ」系バンドが騒ぎ立てたこの1年、メディアやステージを避けがちな湾岸地域出身のボス・ドゥ・ナージュよりも強い主張をしたバンドはひとつもなかった。80年代や90年代への彼らの執着は天地創造のリスト以上に膨れ上がっているように見える。アルバム『All Fours』は、アメリカ中西部のマス・ロックやエモの耳障りなコード、ハスカー・ドゥの楽観的なムードなどがごちゃ混ぜになったような催眠状態を楽しむ音楽である。ヴォーカルのブライアン・マニングが支配と屈辱の物語を甲高い声で叫びながら、カタルシス的な雰囲気と陽気なコードが、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督作の映画から直接抜粋された歌詞と完全に同列に扱われている(もしくは、鞭と鎖のセットのように完璧な組み合わせを求めたのかもしれない)。by C.W.

8位 Royal Thunder(ロイヤル・サンダー)『Crooked Doors』


アトランタ出身バンドのロイヤル・サンダーは、2012年のデビューでジメジメして腐食した感じのブルースとベーシスト兼ヴォーカルのメラニー・パーソンズによる豊かで深い歌声が、アン・ウィルソンやジャニス・ジョプリンといったシンガーの同類と見なされたおかげで、メタル界の成長株のひとつとして一躍有名になった。その後、パーソンズとロイヤル・サンダーのギタリストでメインの作曲家であるジョシュ・ウィーヴァーとの結婚生活は破綻したが、バンドの次回作ではバンドの決意が固く守られている。アルバム『Crooked Doors』は根本的に強情で感情的であり、トラウマのせいで失われたアイデンティティを取り戻すための曲がりくねった本能的な旅路だ。魅力的で心を揺さぶるようなメロディが、幻覚のような夢のなかの光景と思考が混乱する現実世界のどちらにいるのか確認しながら進み、パーソンズは彼女の世代と忌々しいジャンルにおける最も優れた
ソウル・シンガーのひとりとしての地位を確立させた。努力が上手くいかない瞬間があるにもかかわらず、アルバム『Crooked Doors』には惨めさがまったくなく、上品さが最大限表現されている。パーソンズはある意味、メタル版のジェシカ・ジョーンズ(ドラマ『Marvel ジェシカ・ジョーンズ』の主人公で、忘れられない曖昧な記憶と闘い、贖罪と再生を必死に追い求める若い女性)だ。by J.F.

7位 Baroness(バロネス)『Purple』


バロネスがバス事故で危うく命を落としかけてから3年以上が経過してリリースされたアルバム『パープル』には、非常に長い回復期間を終えてチーム復帰を待ちこがれるスポーツ選手の切迫感が鳴り響く。リーダーのジョン・ベイズリーにとってこのアルバムは、利き腕に金属板とそれに巻きつく長いワイヤーがついているにもかかわらず、今でも自分の技術を自由に操ることができることを証明するチャンスである。ほとんどの曲は連続する力のこもった激しいロック・リフを中心に構築され、サイケデリック・ロックやプログレ風のサビが特徴的だ。しかし、音楽がアップビートのエネルギーに溢れている一方で、歌詞はベイズリーが負った傷跡の下でズキズキ痛む神経をさらけ出し、痛々しい脆弱さで身もだえするかのようだ。収録曲『Chlorine & Wine』の約4分間は、クイーンと対戦したピンク・フロイドのような勝ち誇ったクライマックスに突入し、ベイズリーは「彼女が俺の胸郭を切り開き、目の奥に薬の錠剤を押し込む/…/そして主治医は俺の思考につながるケーブルを切断することができない(She cuts through my ribcage and pushes the pills deep in my eyes/… /And my doctor’s unable to cut through the cable that leads to my mind.)」と歌い、自身の怪我の状態を嘆き悲しむ。by J.W.

Translation by Deluca

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