ロジャー・ウォーターズインタヴュー:ジミヘンとのピンク・フロイドツアー、映画『ザ・ウォール』まで

ー前から疑問に思っていたのですが、「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール」の歌詞で、「お肉をちゃんと食べないと、プリンをあげませんよ」という1節は、いったいどこから来ているのですか?あなたの家庭で言われていたことなのですか?


どこかで誰かから、子供がちゃんと食事を終えるように、そんなふうにして叱る人がいたという話を聞いたんだったと思う。うちの母ではない。ひょっとしたら祖母が冗談で言っていたのかもしれない。とにかく、うちではプリンを食べるために肉を完食させられた記憶はないな。あの時言いたかったことは、頭の固いスコットランド人が堅く信奉している考え方、つまり楽しむ前には苦しまなければならないというカルバン主義的な考え方のことなんだ。肉というのは筋っぽくて固いもののことを指している。少なくとも私が育った場所ではそうだった。本当にひどい肉しか回ってこなかった。配給制だったからね。だから「お肉をちゃんと食べないと、というのは一体誰の話ですか」とよく聞かれるから、「あれは私のことだよ。当たり前だろ」と答えてきたんだがね。

ーそんな歌詞が今でもラジオでかかりまくっているのは奇妙なものですね。


「肉も食べないで、プリンがもらえると思っているのか。君、そう、自転車置き場に隠れている君だ。起立しなさい、若人よ」。自転車置き場というのは学校では常にテーマになる場所なんだ。だって、そこでマスターベーションや女の子とのことをしゃべったり、隠れてタバコを吸ったりするんだからね。私が子供の頃には、タバコとセックスは固く禁じられていたんだよ。

ーいまだにそんなふうだと思いますよ。


そうなのかもね。誰もが60年代にはすさまじい性革命があったと言うが、個人的にはほとんど何も覚えていないんだよ(笑)。

ー昔話ついでに伺いますが、回想録は書かれていますか。


2011年頃から折に触れて書き付けている。最初の文章は「ケンブリッジへの引っ越し」と題したもので、第2次大戦の終わり頃、私がまだ1歳半の時にケンブリッジに引っ越しの時のことを書いているんだ。時おり思い出したように執筆作業に戻って、ちょっとした文章を書き貯めているから、これをどうにか編集して、まとまりのある作品に仕立てないといけない。あいにく私は物の保管が得意ではなくて、ずいぶんたくさんの物をなくしてしまっている。こればかりはどうしようもない。物は貯め込むか、貯め込まないか、どちらかしかないからね。まあでも、ビル・ワイマンになるくらいなら、私は私でいいよ。ビルに含むところはないけど、彼は本当に物を貯め込んでいるからね。ニッキー(メイスン)もそうだ。ニッキーは物持ちがすごくいいし、細部まで管理が行き届いているんだ。

ーメイスンも著書『インサイド・アウト(Inside Out)』を出版しています。


そうだったな。あれは写真が素晴らしいんだ。彼が原稿案を送ってきてくれた時、我々はまだちょっと疎遠だったんだ。今では笑い話なんだけど、私は原稿全体に太い青線を引いて、「ゴミ」と書いて送り返したんだ。いや、実際、素晴らしい作品だよ。大好きな本だ。




Translation by Kuniaki Takahashi

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