90年代の人気ヒップホップ・トラック・ベスト10


6位 NAS『ニューヨーク・ステイト・オブ・マインド』


ゲットーの日常を鋭い視点で綴ってみせた『イルマティック』は、ヒップホップ史に燦然と輝く金字塔だ。90年代のラップゲームをネクストレベルへと押し上げたナズのストーリーテラーとしてのスキルは、代表曲のひとつである『ニューヨーク・ステイト・オブ・マインド』に集約されていると言っていい。ジャズをサンプリングしたヴィンテージ感溢れるトラック、そこに絡んでいくスムーズなフロウ、そして見事な緩急の使い分けによって、ナズは自身の才能を世界に知らしめただけでなく、ニューヨークのヒップホップ・サウンドを定義してみせた。


5位 ディガブル・プラネッツ『リバース・オブ・スリック(クール・ライク・ダット)』


ア・トライブ・コールド・クエストやデ・ラ・ソウルに比べれば、ジャズ・ラップ・トリオのディガブル・プラネッツが収めた成功は控えめだったかもしれないが、軽妙でキャッチーな『リバース・オブ・スリック』は紛れもないクラシックだ。躍動するベースラインと「アイム・クール・ライク・ダット」という一度聞いたら耳から離れないリフレインが印象的なこの曲は、見事ビルボードTop20入りを果たした。ディガブル・プラネッツの解散から15年後、メンバーのひとりであるイシュメル・『バタフライ』・バトラーは、よりアヴァンギャルドな方向性を追求するシャバズ・パラセズを始動させ、耳の肥えた90年代ヒップホップのファンたちは歓喜に沸いた。


4位 ヴァニラ・アイス『アイス・アイス・ベイビー』


一発屋の代名詞的存在、ヴァニラ・アイスによるこの大ヒット曲は、誰でも簡単に口ずさめるという点が最大の魅力だ。クイーンとデヴィッド・ボウイによる『アンダー・プレッシャー』のベースラインをサンプリングした『アイス・アイス・ベイビー』は、当時この曲を忌み嫌った大勢の人間の予想に反し、90年代の音楽史に残る名曲のひとつとして、現在でも大勢の人々に愛されている。

Translation by Masaaki Yoshida

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