映画『スーサイド・スクワッド』で、ハーレイ・クインが最高で最低な理由

だからこそマーゴット・ロビーは、見事にクレイジーなバージョンのハーレイ・クインを演じ切っているのだ。彼女の演技は、ハーレイ・クイーンのクレイジーさが、"パパの小さなモンスター"と書かれた野球Tシャツ、ホットパンツ、網タイツという恰好の単なる寄せ集めではないことを示している。予告編が約束した見応えある修羅場や厚かましさは全て、本編でバットを振り回ながらニヤリとするハーレイ・クインが引き出している。強烈な個性を持つ彼女は、観客を興奮させると同時にとてつもなく狂気な存在であり、またジョーカーに恋い焦がれるキャラクターでもある。狂気に満ちたその様子は、問題を抱えた他のイカれた自殺部隊(スーサイド・スクワッド)のメンバーに、「誇りを持ちなさい! 誇りを」と怒鳴りつけるシーンで見ることができる。ハーレイ・クインが本当にジョーカーとヴィオラ・デイヴィス演じるアマンダ・ウォーラーの駒であるなら、またBuzzFeedが「精神が壊れたセックスの対象」と呼ぶキャラクターであるなら、マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインは、自らの問題に誇りを持ち、その性的魅力を利用する完全にクレイジーなキャラクターだということになる。そして彼女が狂気じみた暴力的衝動を楽しんでいる様子からは、病的な魅力をも感じることができる。このことは、ハーレイ・クインがいかに悪党であるかを示しているわけだが、自殺部隊の他のメンバーもそんな彼女に倣うべきだ。ハーレイ・クインが、仮装で人気のキャラクターだというのは当然の結果だろう。彼女は女版ジョーカーなのだ。そしてこのことを、マーゴット・ロビーは知っている。


(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

そんなハーレイ・クインこそ、マーゴット・ロビーが映画の中で演じようとしたものなのだ。作品がダークな映画になり得たことをほのめかす、彼女の素晴らしい演技をわずかに垣間見ることができるから、本当に残念でならない。ハーレイ・クインからは、PTSDを患っているかもしれないこと、恋人との関係が不健全であるかもしれないこと、自らを表現することに問題があるかもしれないこと、そして悲しんだかと思うと次の瞬間には狂うことができるキャラクターであるかもしれないことを読み取ることができる(映画最大の見せ場は、水没した車のフロントガラスから引っ張り出された彼女が、刀を振り回し切り付けるシーンだ)。マーゴット・ロビーが、映画の中に予測不可能な要素を組み込もうとしているのは明白だ。しかし、それに反して映画は予測可能なもので、ファンが好むハーレイ・クインの全てのバージョン、つまり被害者、加害者、セクシーでクレイジーな女、恋に悩む危険人物、ビヨンセの『レモネード』のMVに登場するフェミニストの戦士、そして現代の同性愛の化身バージョンの彼女を見せようとしているように思える。その結果、私たちはそれぞれのバージョンの片鱗しか見ることができないのだ。映画はハーレイ・クインに、血のついたセックスの対象というステレオタイプを与え、彼女の存在をジョーカーを「燃え上がらせる存在かつ迷惑な存在」(ジョーカーの台詞であって、米女性誌ヴァニティ・フェアからの引用ではない)へと格下げしている。

Translation by Miori Aien

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