ブライアン・イーノ、イスラエル大使館後援のイベントでの楽曲の使用を拒否

ブライアン・イーノは、イスラエル大使館後援のイベントに出演するバットシェバ舞踊団に彼の楽曲の使用拒否を伝えた。(Photo by Luca Carlino/NurPhoto via Getty Images)

「イスラエル政府はあなた方のようなアーティストを自己の利益のために不当に利用しようとしているように思う」。作曲家でプロデューサーのブライアン・イーノが彼の楽曲の使用許可を求めたダンスカンパニーに告げた。

電子音楽のパイオニアであるブライアン・イーノは、イスラエルのバットシェバ舞踊団が出演するイタリアでの一連の公演に彼の楽曲を使用することを拒否した。ガーディアン紙によると、イーノは同イベントにイスラエル大使館が後援していることを知ると、バットシェバ舞踊団へ書面で彼の意向を伝えたという。

イスラエル大使館が後援するイベントにイーノの楽曲を使用することは、彼の倫理に反する。作曲家でプロデューサーであるイーノは長い間、イスラエルのパレスチナ人領土の占領に反発したイスラエルに対するボイコットと投資の中止、制裁措置を呼びかける運動(BDS)を支援してきた。BDS運動は、パレスチナ人の自由と平等を求めた世界的なキャンペーンである。イーノはまた、芸術文化に関わる人々がイスラエル政府関連のいかなる組織からの投資も受けないようにしよう、というキャンペーン「Artists’ Pledge for Palestine」にも名を連ねている。

バットシェバ舞踊団と振付師オハッド・ナハリンへ宛てた書面の中でイーノは、つい最近まで彼の楽曲が使用されることを彼自身が知らなかったこと、そして楽曲の使用は光栄なことである一方で彼にとって"深刻な矛盾"が起きうることを伝えた。「わたしの楽曲を使用する予定だった舞台は、イスラエル大使館、つまりイスラエル政府が後援するものと理解しています。わたしは数年来BDS運動を支援してきました。従って、今回の公演にわたしの楽曲を使用することは許可できないのです」。


「BDS運動に反対する人々は、"芸術を政治的な武器として使用すべきではない"と言います。しかし、イスラエル政府は"ブランド・イスラエル(Brand Israel)"キャンペーンを立ち上げ、明らかに芸術を政治利用してきました。そしてパレスチナ人の領土の占拠から世間の目をそらせようとしています。わたしの今回の楽曲使用拒否の決断は、イスラエル政府の手から(芸術という)武器を取り上げるためのひとつの行動です」、とイーノは書いている。

イーノは、バットシェバ舞踊団のようなイスラエルのアーティストたちがパレスチナ問題に対して政府に反対の意志を示した時、立場が非常に悪くなることは承知している。しかしイーノは、イスラエル政府がアーティストを巧みに操っていると見ている。

「それが政府のプロパガンダ戦略に利用されているとわかっていても、アーティストとしての本能に従って純粋に活動を続けるあなた方のようなアーティストを、イスラエル政府は自己の利益のために不当に利用しようとしているように思います。あなた方のダンスカンパニーは、公然とイスラエル政府との距離を置くことはできないのかもしれません。しかしわたしはできます。そしてわたしは行動を起こします。わたしはイスラエル政府が後援するいかなるイベントにもわたしの楽曲を使用して欲しくありません」。

イーノはここ数ヶ月、社会政治的な問題に対して積極的に発言してきた。2016年6月には、イギリスのEU離脱(Brexit)が労働者や移民に与える大きな負担について意見表明した。2016年4月、イーノは4年ぶりのソロアルバム『The Ship』をリリースしている。

Translation by Smokva Tokyo

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