ノーベル賞授賞式でパティ・スミスは、ボブ・ディランの曲『はげしい雨が降る(原題:A Hard Rain’s A-Gonna Fall)』を感情豊かに表現した。彼女はそのパフォーマンスに込めた思いを、ザ・ニューヨーカー誌へのエッセイで明らかにした。心を打つ文章の中でスミスは"極度の緊張状態"だった様子を明らかにし、彼女の人生に大きな影響を与えたディランと、彼女が選んだ曲への思いを語った。
スミスは以前ローリングストーン誌に対し、授賞式でのパフォーマンスを打診されたのはディランの文学賞受賞決定前のことで、当初は自分の曲を演奏することを予定していたと明かしていた。今回のニューヨーカー誌に寄せたエッセイでスミスは、ディランの『はげしい雨が降る』を選んだ理由も語っている。彼女はティーンエイジャーの頃からこの曲が大好きで、彼女の亡き夫フレッド・スミスのお気に入りでもあったという。彼女が最初に聴いたディランのアルバムは『フリーホイーリン・ボブ・ディラン(原題:The Freewheelin’ Bob Dylan)』で、それは彼女の母親からのプレゼントだったというエピソードも披露している。
曲の出だしの歌詞「霧につつまれた12の山々をフラフラしながら歩き続けた(I stumbled alongside 12 misty mountains)」や、最後の「歌い始めるまではその曲の本当の意味を理解できない(And I’ll know my song well before I start singing)」はまさに私の状況に当てはまり、よく理解できた。歌い終えて席に着いた時、失敗してしまった恥ずかしさでいたたまれない気持ちになった。でもそれと同時に、これでようやくこの歌の世界に入り込み、実体験できたという不思議な感情も芽生えた」。