大統領選翌日のオバマ大統領最後のインタヴュー:トランプの勝利、これからの自分

ーまず、昨夜の大統領選の結果とドナルド・トランプについての所感からお伺いしなければなりません。目の前で起きていることは現実のものとして受け止められたでしょうか?それとも我々のように大きなショックを受けていたでしょうか?今のお気持ちをお聞かせください。

そうだね、私もがっかりしたよ。ヒラリー・クリントンはほんとうに素晴らしい大統領になると思っていたから。選挙戦中にも述べた通り、我々が一緒にやってきた仕事はまだ一部しか完結していない。より高い成果を上げるためには継続が必要だ。

ー今回の大統領選の結果は予想されていましたか? 

2008年のニューハンプシャー州を振り返ってみよう。その直前に私はアイオワで勝利し、あわただしくニューハンプシャーへ乗り込んだ。集会には多くの支援者が集まり、事前の予想では私の方が10ポイント上回っていた。そして7時半頃、私は勝利のスピーチのために身支度を始めた。その時、デイヴィッド・プラウ、デイヴィッド・アレックスロッド、ロバート・ギブスが気まずい表情を浮かべながら入ってきて言った。「バラク、とてもおかしなニュースを伝えなければならない。どうやら我々はここでは勝たないようだ」。

これが民主主義だ。これが選挙というものだ。投票に意味がないというのではない。しかし人間の心は移り気である、ということだ。だから、ドナルド・トランプの勝利の可能性は常に20%ぐらいはあると思っていた。そんなに大きな数字ではないと思えるが、5分の1の可能性からの勝利は珍しいことではない。奇跡でもなんでもない。

ーそれでも悔しくて憤りを感じ、うろたえませんでしたか? 

いいや、そんなことはない。我を忘れるようなことはない。なぜならまず、私はこの8年の成果を誇張したりしない。そんなことをしなくとも、私が次期アメリカ合衆国大統領へ政権を引き継ぐ時、私は「今のアメリカはより良い状態になっている」と堂々と言えるからだ。経済はより強くなり、政府もよく機能している。そして世界の中のアメリカの存在感も増した。我々の成し遂げたことに誇りを持っている。国民はとても満足してくれたと思う。

率直に言うと、選挙の影響はあると思う。次期最高裁判事は、私の政策方針とは異なる考えを持つ人が就任するだろう。国内外で我々が推進してきた気候変動に関する努力も危うくなるだろう。2000万の国民に医療保険を適用した医療保険制度改革は方向転換され、その犠牲となる人々も出てくるだろう。とはいえ共和党も、数千万もの国民から医療保険を取り上げるような政策は賢い選択ではないと結論づけようとしているようだ。しかし私はうろたえてはいないが、私の政権や選挙戦で活躍してくれた有能な若者たちのことを思うと、とても残念に感じる。今回の大統領選に投票した若い世代の有権者のみのデータを集計比較すると、ヒラリーは500名の選挙人を獲得できた計算になる。オープンに政治参加し、公正さを求め、環境問題にも取り組む若い世代を育てることができた、と自負している。そんな若者世代がこれからだんだんと増え続け、アメリカは徐々により良い国となっていくだろう。


大統領選の翌日、大統領執務室を訪れてインタヴューするローリングストーン誌創刊者兼編集長のヤン・S・ウェナー。オバマ大統領は、「大統領というのは個別の案件を処理しながらも、過去から引き継いだ大切なものを未来へ伝えていくという役割を、何を置いても優先しなければならない」とトランプへ向けたメッセージを語った。(Pete Souza/The White House)

Translation by Smokva Tokyo

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE