映画で見るカート・コバーン:その生涯を描いた映像作品の数々

『The Vigil (for Kurt Cobain)』(1998年)


無名の俳優たちが出演したこのカナダ産インディー映画には、コバーンの姿はおろか、彼が残した音楽も登場しない。しかしタイトルが示すように、今作が彼にインスパイアされた作品であることは疑いない。コバーンの自殺から数日後、ブリティッシュ・コロンビアでバンドを組む少年たちは、彼の通夜に参列しようとシアトルを目指す。バンクーバーに近い地元の人々以外にはほとんど知られていない本作だが、現在はNetflixで視聴可能となっている。


『ラストデイズ』(2005年)
(原題:"Last Days" 2005)


『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』が発表されるまで、ガス・ヴァン・サントが監督を務めた本作は彼に関する映像作品の決定版とされており、映画『ウォーク・ザ・ライン / 君に続く道』のカート・コバーン版とも言われていた。訴訟沙汰を避けるためか、本作はあくまでフィクションとされているものの、舞台は1994年のシアトルであり、マイケル・ピット演じるバンドマンのブレイクは、紛れもなくカート・コバーンをモチーフにしたキャラクターだ。本作でヴァン・サントが描こうとしたのは、彼を自殺へと追いやった孤独感と鬱症状に苛まれた日々だ。またソニック・ユースのシンガーであり、コバーンが信頼を寄せていたキム・ゴードンが、ブレイクの精神状態を案ずるレコード会社の社長役で出演していることは、本作に一層の信憑性をもたらしている。それでもニルヴァーナのファンの多くは、本作に否定的な見方を示した。

Translation by Masaaki Yoshida

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