デフ・レパードがついにストリーミング配信を受け入れた理由

「業界の食い物にされたくない」とジョー・エリオットは言う(Photo by Tim Roney/Getty Images)

デフ・レパードのジョー・エリオットは、バンドの楽曲をこれまでストリーミング・サービスへ提供しなかった理由を明らかにした。「業界の食い物にされたくない」

ハードロック・バンドのデフ・レパードは長年に渡り、ガース・ブルックスやトゥールらと同様、ストリーミング・サービスへの楽曲の提供を拒んできた。これらマルチプラチナ・クラスの有名アーティストたちは、賛否両論あるサブスクリプション方式の音楽事業に違和感を感じていた。デフ・レパードはストリーミング配信に関し、ユニバーサルと長い間論争を続けてきた。バンドが正当なロイヤリティを得るために再レコーディングしてセルフリリースした、自らが“偽造”と呼ぶ「シュガー・オン・ミー」や「ロック・オブ・エイジズ」なども、議論の対象となっていた。「レーベルに対して、“あなた方が何を望もうが、我々からの答えはノーだ。だからバンドに何も依頼しないでくれ”って内容の文書を送りつけたんだ」とエリオットは、2012年に証言している。

ところが状況は一変した。2018年1月19日より、ファンはバンドのすべてのヒット曲を、全有名ストリーミング・サービス上で楽しめるようになった。カタログには、デフ・レパードのデビューアルバム『The Def Leppard E.P.』も含まれる。「バンドにとってフェアな取引が必要だった」とフロントマンのジョー・エリオットはローリングストーン誌に語っている。「僕らは業界の食い物にされたくない。バンドは何十年も前にマーキュリーと契約を結んだが、デジタルに関する条項はなかった。2009年にその契約が切れた時、僕らは何でも自由にできるようになった。その頃僕らはツアーに忙しく、市場ではCDも売れていたので、僕らは過去の楽曲の心配などしていなかった。それで僕らは、ストリーミングを受け入れていいものかどうか、確信を持てなかったんだ」

エリオットは、レーベルの代理人がバンドに「ストリーミングは新しく素晴らしいビジネスだが、1億2500回視聴されたアーティストの取り分が120ドルという信じられない状況だ」と言ったことを覚えている。バンドは「お金のためにストリーミング・ビジネスに参入するのではない、ただしデジタルに関する契約はフェアであって欲しかった」とシンガーは言う。「僕らは、“ストリーミングはバンドに悪影響を及ぼさないが、契約はフェアであるべき”という結論を出した。決して一夜の内にこの結論へ至った訳ではない」

エリオットによると、バンドが楽曲をストリーミング配信することを受け入れたのは“かなり前”のことだと言うが、契約はなかなか成立しなかった。バンドの唯一の懸念事項は、彼らのすべての楽曲を全有名ストリーミング・サービス上へ一度にリリースできるかどうか、ということだった。「このアルバムはこのストリーミング・サービス、またこちらのアルバムは別のサービス、というやり方は望まなかった。それぞれのサービスと交渉するのはただ時間がかかるだけだ」とエリオットは言う。そのためバンドは、機が熟すのを待った。「僕らがやろうがやるまいが、運命を左右するようなものではない。だから僕らはやらない、と自分たちで決めたんだ」

今回状況が変わった理由のひとつは、ユニバーサル内の政権交代にある、とエリオットは言う。「よりやりやすくなった。ストリーミングを受け入れ、すべての楽曲を一度にリリースすべきだ、という結論を出すことができた。最初にレーベルと契約するきっかけとなった1979年のデビューEPから、2015年にリリースした最新アルバムまで、すべてをストリーミングで楽しめるようになった」

バンドにとって最後のパズルのピースは、タイミングだった。「僕らは小出しにするのは好きではない。インパクトのあるネタがない時のように、情報を少しずつ出すやり方は嫌なんだ。爆発的な反響のある告知をしたい」とエリオットは笑う。デフ・レパードは、2018年夏に行うジャーニーとの大規模サマーツアーの告知に合わせて、ストリーミングに関する発表を行った。

「僕らの40年間に興奮が戻ってきた。本当に価値のあることさ」


Translation by Smokva Tokyo

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