高価アイテムからポップアップ・ストアまで、音楽物販が儲かる理由

ブランド化された高価な衣類から人目を引くポップアップ・ストアまで、アーティストにとって物販ビジネスは不可欠になりつつある(Photo by Suzanne Kreiter/The Boston Globe via Getty Images)

CDセールスが激減している昨今、アーティスト・ブランドを冠した1000ドル(約11万円)のジャケットからボード用のショーツまで、アーティストとレコード会社はさまざまな物販グッズを開発している。

3年前、フォール・アウト・ボーイがニューヨークにポップアップ・ストアを開店し、パンク・ロックのクラブを模した店内でTシャツを販売した。2017年秋、彼らはニューヨークとロサンゼルスに店舗を開くことを再検討し、前回よりも格段にグレードアップした雰囲気と飾り付けのショップをオープンさせた。

紫色がかった窓は、彼らのニュー・アルバム『マニア』のジャケットをイメージしたもので、作品の世界観に紛れこんだ感覚を与える。販売しているグッズの中には150ドル(約1万6000円)のハンドペイントのデニムジャケットもある。「今では市場が大きくなっているし、収益も格段に上がっている」と、フォール・アウト・ボーイ、シャナイア・トゥエイン等、多くのアーティストのグッズ製作と販売を担っているマンヘッド社の社長、クリス・コーネルが言う。「ここまで成長するとは驚きだ」と。

かつての音楽物販(Tシャツ、ポスターなど)はミュージシャンの収入の付加的な存在だったが、いつの間にか成長著しいビジネスへと発展したのである。LIMA(ライセンス業小売業者協会)によると、2016年の音楽物販の総売上は31億ドル(約3400億円)に達し、前年度の10%増となった。小売分析グループEditedが分析したところ、市場で販売されている音楽関連の物販アイテムの総数が過去2年間で3倍になっているという。物販会社BravadoのCEOマット・ヴラジックは「音楽自体のデジタル化が進んでいるため、ファンは物理的な商品を欲しがる傾向が強い」と言う。

そして今、アーティストと提携したオンライン・ショップ、小売店、ポップアップ・ストア、コンサート会場で販売されるグッズに、高価な商品が次々と投入されている現実がファンを取り囲んでいる。例を挙げると、240ドル(約2万6000円)のデニムのシェルパ・ジャケット(ザ・ウィークエンド)、1050ドル(約11万円)のサイハイブーツ(カニエ・ウェスト)、1095ドル(約12万円)の襟にコヨーテの毛皮付きのカナダ産グースダウン入りボマージャケット(ドレイクのブランドOVO)など。


イギー・ポップのボードショーツ(Photo by Billabong)

Translated by Miki Nakayama

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