BRAHMAN武道館密着レポ「矛盾すら唯一無比の説得力になるオリジナリティ」

Eriko Ishii | 2018/02/12 23:20

| 武道館のステージに立つBRAHMAN(Photo by Tetsuya Yamakawa [Showcase]) |



昨年のシングル「不倶戴天」と、メジャーデビューシングルに当たる1999年の「Arrival Time」を並べて演奏できること。どちらの曲も同じようにダイバー(身軽に泳ぐ20代もいれば、着地時に足をもつれさせる40代オッサンもけっこういる)が続出すること。20年以上の歴史はファンの年齢層を今なお広げている。AIR JAMが始まった頃に生まれ、当時の熱狂に憧れるキッズはいるかもしれないが、あの頃に戻りたいオッサンは少ないはずだ。BRAHMANは今が一番説得力のあるバンドだし、今だからこんな武道館公演をやれている。ずっと孤高と呼ばれてきたが、気づけばこんなにも仲間がいるのだ。そして刹那しか見ていないようで、ロックコンサートの伝統を築いてきた武道館にはちゃんとリスペクトがある(「ここでロンちゃんがチンチン出して、ビートルズからの歴史が終わるわけにはいかねぇ」のMCが最高だった)。さらに言うなら、伝承されてきた歌そのものに深い愛を注ぐのが、今の彼らなのだ。


KOHKI(Gt)(Photo by Tetsuya Yamakawa [Showcase])

親友、と呼ぶ細美武士と見つめ合って切々と歌い上げたバラード「今夜」も素晴らしかったが、白眉はやはり「満月の夕」。阪神淡路大震災のときに生まれ、東日本大震災以降はBRAHMANがバトンを受け取った、民謡のような響きを持つ名曲だ。作曲者である中川敬と山口洋、コーラスのうつみようこをゲストに迎えて始まった歌は(演奏は、とは言いたくない。三線もギターもドラムも「歌」そのものだった)、時空を超える大切な祈りとして武道館に響き渡る。天井には蔓草模様の影が浮かび上がり、イエローに照らされるステージと、ブルーに染まる空間があった。まるでステージが月だった。武道館の屋根が地面で、アリーナの中心が宇宙のよう。見上げているのか、見下ろしているのか。その感覚すらわからなくなっていく中で、ただ、美しい歌が続いていた。永遠のように。


RONZI(Dr)(Photo by Tetsuya Yamakawa [Showcase])

総合的に見事なエンターテインメント。しかし、肉体一つで勝負するシンプルなライブでもあった。TOSHI-LOWが「一個だけ言わしてくれよ……ご来場ありがとうございます!」と笑うのはこれが最初で最後だろうが、この日と同じく、オンリーワンのライブ・パフォーマンスはこれからも続いていく。最新アルバムから「真善美」。己の問いを客に手渡した瞬間に暗転という、息を呑むようなエンディング。いかにも武道館らしい大団円ではなく、BRAHMANにしかできない終わらせ方。そのとき誰もが思ったはずだ。

こんなバンドを好きでいて、本当に良かった。

開演前の楽屋はゆったりしたもので、ゲストはそれぞれの部屋でくつろぎ、BRAHMANの楽屋も友人たちがぽつぽつ顔を出す程度。終始リラックスした空気が流れていた。差し入れられる酒の量と遠方から足を運んだ親戚の数がやけに多かったのが、日本武道館特有のトピックだろうか。逆に異様だったのは、見たこともない大混雑となった終演後のロビー打ち上げだ。決して狭くない武道館のロビーがほとんどモッシュピット状態である。とはいえ多くはパンクスやバンド関係者なので、カオスな人混みも慣れたもの。自然な笑顔でそれぞれ好き勝手にビールを飲んでは談笑している。ふと可笑しくなった。武道館なのに、最後は新宿ロフトみたい。結局はいつものライブハウスだ。苛烈なパフォーマンスの直後から、これだけの仲間に祝福され、愛にあふれた言葉に囲まれていた4人。これもまたBRAHMANらしい、バックステージの光景だった。


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