ジャミーラ・ウッズが語るシカゴと教育、チャンス・ザ・ラッパーとエリカ・バドゥ

ジャミーラ・ウッズ、ビルボードライブ東京にて(Photo by Masanori Naruse)

チャンス・ザ・ラッパーのサマーソニック出演も決定し、注目を集めるシカゴ新世代きっての女性シンガー、ジャミーラ・ウッズが去る1月に初来日公演を実施。マルチな才能を持つ彼女に、シカゴのコミュニティや教育に対する考え、チャンス・ザ・ラッパーとの関係や敬愛するアーティストについて話を聞いた。

「シカゴ出身のジャミーラ・ウッズによるデビュー・アルバムは、ドリーミーで希望に満ち、政治的なメッセージも内包している。そのネオソウル風の味わい深いサウンドは、彼女の地元への、文化への、そして自分自身への愛をじっくりと、そして最も自然に表現できるスタイルなのだろう」

2016年にミックステープとして発表され、2017年に日本盤リリースされた『ヘヴン』を、本国のローリングストーンはこんなふうに評している。チャンス・ザ・ラッパーやダニー・トランペット(ニコ・セガール)、ノーネームなどシカゴの仲間たちも参加した同作は、世界中のメディアで高評価を獲得。この度、東京で一夜限り披露されたパフォーマンスも、評判に違わぬ素晴らしい内容だった。そのときの歌声と同様に、ジャミーラは語り口も実にチャーミング。ゆっくりと言葉を選ぶ理知的な仕草に、詩人としての天性を垣間見た気がした。


私の人生なんて、誰かに語るほどユニークではないと思い込んでいた

ジャミーラ 私の曲をカヴァーした日本のバンドがいるそうなんですけど、何か知ってますか?

─残念ながら知らないです。でもクールですね。

ジャミーラ もっと日本の音楽についても知りたいんですよね。宇多田ヒカルは子どもの頃に聴いていました。

─あなたは1989年生まれですよね。彼女の音楽はどうやって知ったんですか?

ジャミーラ 詳しくは覚えてないけど、その頃やっていたブログを通じて知ったはずです。

─いろんな音楽がお好きなんですよね。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやニルヴァーナの曲もカヴァーもしていたり。

ジャミーラ ロックだけじゃなくて、ヒップホップやジャズ、ポップも好きです。



─そのなかで、あなたにとってのヒーローを挙げるなら?

ジャミーラ エリカ・バドゥとスティーヴィー・ワンダーですね。エリカはサウンドも他の人と違うし、何かやるとなったら常に全力で、しかも常に進化している。私はゆっくり燃えるタイプだけど、彼女は常に時代の先端を突き進んでいて、少し待ってあげないと周りが追いつけないくらいですよね。そういうところもすごく好き。

スティーヴィーは、『カンバセーション・ピース』(95年)というアルバムが大好きなんです。愛に加えて人種問題などハードで社会的なテーマも扱っているけど、サウンドそのものは体を動かさずにいられないもので。彼の作品のなかでそこまで評価されているわけではないけど、物凄くいいんですよね。

─音楽以外ではどうです?

ジャミーラ グウェンドリン・ブルックスというシカゴの女性詩人がいて、ピューリッツァー賞も受賞しているんですけど、身近なことを詩にしているところに感銘を受けました。(彼女を知るまで)私の人生なんて、誰かに語るほどユニークなものではないと思い込んでいたので。自分のストーリーを語るという点で、かなり影響を受けていますね。

─その影響というのを、もう少し具体的に掘り下げると?

ジャミーラ グウェンドリンは詩人であるのと同時に、教師でもあったんですよ。私も今、若い人たちに詩を教えていて。それについて「デイ・ジョブしてるんだ」と言われたりもするけど、教え子とのやり取りを通じていろんなものを受け取っているんですよね。彼らとの会話からインスピレーションをもらうことも多くて、実際にボイスメールで録音した声をアルバムで使ったりもしていますし。あとはグウェンドリンも、コミュニティとの繋がりを大切にしていた人なので、自分の生まれ育った土地について歌う点でも影響されていると思います。

Translated by Kyoko Maruyama

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