エミネム、コーチェラ・フェスティバルの舞台でドクター・ドレーと競演

エミネムの友人でありプロデューサーの50セントはリングに上がるボクサーのごとく登場し、激しく飛び跳ねながら、「ペイシェイントリー・ウェイティング」「アイ・ゲット・マネー」「イン・ダ・クラブ」という難しいラップ曲3曲を牽引した。そして、ドクター・ドレーとの共演は、マーシャル・マシューズをスターにした、かつてのプロデューサーとラッパーという関係性が再現され、エミネムが狂ったように「Dr. Dre’s dead, he’s locked in my basement…」とラップし始めるとドクター・ドレーが出現した。

これをきっかけに、ライブは一気に90年代のドレーの音楽にシフトし、「ナッシン・バット・ア・G・サング」のスヌープ・ドッグのラインをエミネムがラップし始めたのだった。ラップ・スターとしてのドレーはステージに登場することがほとんどないのだが、コーチェラへの出演は実現する努力をしているようで、近年彼が登場する唯一のステージとなっている。2012年にはスヌープと共にヘッドライナーとしてライブを2回行い、2017年はアイス・キューブのセットでN.W.A.再結成を実現した。そして2018年はエミネムのステージに登場したのである。

エミネムにとって、ドクター・ドレーと共に築いたキャリアの第一章は、自分自身、衝突するエゴ、人生とアートへの妄想と葛藤を自分の言葉で紡ぎながら作り上げていったものだった。何千もの観客を前にして、エミネムは今でも自己不信やフラストレーションを、決して妥協しないテクニックと音楽に乗せて表現している。「ウォーク・オン・ウォーター」の一節の「Will this step just be another misstep/To tarnish whatever the legacy, love or respect, I’ve garnered?/The rhyme has to be perfect, the delivery flawless」(※このステップもまた間違いになるのか/苦労して手に入れたレガシーや愛やリスペクトを台無しにするのか/ライムは完璧じゃなきゃダメ、言葉は淀みなく出てこなきゃダメなんだ、という意味)がそれを物語っている。

スリム・シェイディを同世代のアイコンにした要素すべてが、この日のステージに凝縮されていた。

Translated by Miki Nakayama

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