世界を制した映画『ブラックパンサー』監督と主演のエモーショナルな物語

クーグラーはこう話す。「アフリカにルーツを持つということ、その意味についての作品を作りたかった。生まれ育った場所の違いを超えて、我々は同じスピリットを共有している。このプロジェクトのコードネームは母なる大地、つまりマザーランドだ。僕たちはみな、アフリカの大地から大切なことを学んだんだよ」

「アフリカを舞台とするこの壮大な世界観は、巨額の予算と途方もない数の人間による努力の賜物さ」とボーズマンは語る。「でもこれは『スター・ウォーズ』じゃない。ブラック・スーパーヒーローの物語なんだ」。今でも目の前の状況が信じがたい一方で、それが必然の出来事だと感じることもあるという。「こうあるべきなんだよ。だってそうじゃなかったら、二流のマーベル・ムービーが存在することになってしまう。二流のスーパーヒーローがね」。ボーズマンはそう話す。

ボーズマンにとって、本作の最大の魅力は徹底した「黒さ」だという。「(黒人の)俳優の中には、そのキャラクターが黒人だからという理由だけなら、自分が演じる意味がないと考える人間もいる。彼らの言い分は間違っていないと思う。ただそういうスタンスだと、ホワイトウォッシュによって覆い隠されてきたものに光を当てることはできない」



撮影現場でのライアン・クーグラーとボーズマン(2017年)。宿敵キルモンガーを演じたマイケル・B・ジョーダンはこう語る。「チャドの演技は素晴らしかった。この役に相応しい俳優は彼以外にいないと感じたよ」(Matt Kennedy/ © Marvel Studios 2018)

「映画の世界において、黒人のキャラクターの人間性が十分に描かれることは少ない」。黒人の俳優たちが抱える葛藤について、ボーズマンはそう話す。また若い黒人の才能の発掘に消極的なハリウッドの姿勢について、彼ははっきりと異を唱える。「エージェントたちが毎年オーストラリアに行くのは、若い白人の俳優をスカウトするためだ。でも彼らが14時間のフライトを我慢して、有望な黒人俳優の発掘に乗り出すことはない」

「今この業界に大きな変化が起きていることは確かだ」。ボーズマンはそう力説する。「バリー(・ジェンキンス)、エイヴァ(・デュヴァーネイ)、ライアン(・クーグラー)、まさにブラックムービーにおけるルネッサンスだ。でももっと変わらなくちゃいけない。ギャップの大きさは、今でも数字が物語ってる。白人の俳優なら15ショットあるところが、黒人俳優には3ショットしか与えられない。9回までNGが許されていたとしても、僕たちの場合は2度NGを出せばキャリアが終わりかねない。そういう無言の重圧が存在するんだ。ヘマをやらかせばもう2度とチャンスは与えられない。ライアンだってそういう世界で生きてきたんだ」

彼は自虐気味に笑ってみせる。「僕の言ってること、間違ってないだろ?」

Translated by Masaaki Yoshida

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE