ローリングストーン誌が選ぶ「2017年ベスト・ムービー」

4位 『スリー・ビルボード』

アングロ系アイルランド人脚本家・監督マーティン・マクドナーは、今作品で自身が最も得意とする分野を見つけたようだ。10代の娘を強姦され、殺害された田舎町に住む活動的な母親(フランシス・マクドーマンド)が、事件を解決しない警察への怒りを表わすためにビルボード(野外広告板)を借りる顛末を、痛ましさや激怒の中に多少の喜劇を混ぜながら描いている。この作品の中でマクドーマンドとマクドナーのコンビは、現在我々が感じている無力感や怒りをしっかりと表現しているのだ。

日本公開:終了 ※5月16日から先行デジタル配信、6月2日よりブルーレイ&DVDリリース

3位 『君の名前で僕を呼んで』

ルカ・グァダニーノ監督のこのエロティック・ロマンス作品の中には同性愛嫌いが存在する場所は皆無だ。舞台は1983年のイタリア。音楽の神童(ティモシー・シャラメ)と彼の父親のハンサムなアシスタント(アーミー・ハマー)は、初恋の高揚感と身を引き裂くような失恋の痛みを経験する。共感こそが不寛容に対する最大の対抗手段だと納得させられる芸術作品だ。本年度、アカデミー賞(脚色賞)を受賞。

日本公開:4月27日より公開中


2位 『ゲット・アウト』

オスカーの最優秀作品にホラー映画はノミネートされるのか? もちろんだ。主人公(ダニエル・カルーヤ)は白人の彼女(アリソン・ウィリアムス)に連れられて彼女の実家に行くことになるが、それが何を意味するのか気付かずにいた。ここで描かれているのは黒人文化だけではない。2017年最も話題を集めた新人監督ジョーダン・ピールのデビュー作は、目をつぶったままで目覚めようとしないアメリカの人種差別に対する偽善を、恐怖と笑いを交互に出しながら痛烈に批判している。

日本公開:終了  ※一部会社のみデジタル配信、Blu-ray&DVDもリリース済み。

1位『ダンケルク』

2017年のベスト・ムービー No.1はクリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』。1940年、ヒットラーが指揮する陸・海・空の全方向からの攻撃で、フランス北端のダンケル海岸に追い詰められた英国兵士が行った世紀の撤退作戦を描いたこの作品は、映画が本来持っていた純粋な意義を再認識させる。ノーランは余計な説明セリフは入れずに、見る者を作品に没頭させ、戦闘現場での生きるか死ぬかの瞬間を、独裁者の気まぐれに従わざるを得ない餌食の気分を、そんな状況に反抗する強い意志を、追体験させる。(ノーランのこの作品のあとに、ゲイリー・オールドマンが英国首相チャーチルを演じたジョー・ライト監督作品『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』を見ると、当時の権力の中枢がどのような様子だったかが理解できる。ダンケルク海岸での大量虐殺への政治的な反応に、現在の一触即発の世界との類似点を見るはずだ。)

日本公開:終了 ※デジタル配信、Blu-ray&DVDもリリース済み。

Translated by Miki Nakayama

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE