元PRIDEヘビー級王者がFBIの捜査対象に ロシアゲートと総合格闘技のダークサイド

2008年、ヒョードルと写真に収まるドナルド・トランプ(Photo by Tiffany Rose/WireImage)

元PRIDEヘビー級王者で一時代を築き「人類最強の男」と呼ばれた格闘家、エメリヤーエンコ・ヒョードル。昨年6月に総合格闘技ベラトールに初参戦した彼は、2018年4月28日、米イリノイ州ローズモで開催されたベラトール198で10カ月ぶりに試合復帰。そして、その会場にはFBIの捜査官が派遣されていたという。

なぜFBIはこの男に接触したのか? それは2008年にさかのぼる。当時彼は、全身にタトゥーを入れた弟アレキサンダーと共に、短命に終わったベンチャー企業アフリクション・エンターテインメント社の経営に関わっていた。アレキサンダーはその後、性的暴行容疑で有罪判決を受けている。同社は、ドナルド・トランプとのパートナーシップにより立ち上げられたもので、トランプの顧問弁護士でもあるマイケル・コーエンが、COOを勤めていた。FBI捜査官とヒョードルとの間でどのような会話が交わされたかは定かでないが、2018年4月にFBIがコーエンの自宅や事務所、滞在先のホテルの客室などを捜索した件に関連していると思われる。

ヒョードルはまた、ロシアのウラジミール・プーチン大統領や政権与党の統一ロシアとも密接な関係にある。不規則に広がるトランプのロシア・コネクションの中でヒョードルは、不気味で不思議な役割を果たしている。

ロシアのドミトリー・メドヴェージェフ首相がロシア・フィジカル・フィットネス&スポーツ評議会の役職を離れた後、プーチン大統領は彼の後任としてヒョードルを指名した。2010年、ヒョードルは統一ロシア党から地方議会へ出馬し、当選している。ヒョードルは、プーチンによるウクライナに対する軍事行動や、クリミア併合政策を支持しているとされる。

一方でトランプとヒョードルとの関係は、約10年前から始まっている。

「2008年にトランプは、アフリクション・クロージング社というマーシャルアーツをテーマにしたアパレル会社からアプローチを受けた。格闘技関連のスポンサー事業の拡大を目論んでいた同社は、トランプこそ広告塔として相応しいと考えていた」と、米政治専門メディアのポリティコが2016年に伝えている。格闘技のファンだったマイケル・コーエンは、トランプに同社との契約を強く勧めた。トランプはヒョードルのプロモーター兼マネージャーであるワジム・フィンケルシュタインと組み、新たなベンチャー企業アフリクション・エンターテインメント社の壮大な計画を打ち立てた。ところが、ウォッカ、ステーキ、大学などトランプのその他多くのビジネス・スキーム同様、アフリクション・エンターテインメント社も悲惨な状態で崩壊した。同社は、カリフォルニア州アナハイムで2度の大赤字興行を実施しただけで、倒産した。どちらの興行にもヒョードルが関わっていた。

Translated by Smokva Tokyo

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