米R&BプロデューサーたちがK-pop市場に活路を見出した理由

アメリカの作曲家たちとの仕事がそういった行為を正当化することはないが、少なくともそこには本場R&Bとの接点を持とうとする彼らの真摯な思いが見て取れる。そういった姿勢は、日常の一部としてR&Bに慣れ親しんできた、英語で歌う欧米のポップアクトたちには決して見られない。現にアデル、サム・スミス、エド・シーラン、テイラー・スウィフトといった、R&Bに片足を突っ込んだアーティストたちが組むのは、白人が独占するポップス界のプロデューサーばかりだ(グレッグ・カースティン、スティーブ・フィッツモーリス、スティーブ・マック、マックス・マーティン等)。

「誰もがR&Bに影響を受けているけど、リスペクトが感じられないケースは多いわ」少女時代に楽曲を提供したケリーはそう話す。「90年代のR&Bからの影響を堂々と表現しているK-popのシーンに、私は好感を持っているの。アメリカじゃポップでもヒップホップでもカントリーでも、そういう姿勢は見られないもの」

K-popシーンのR&Bへの傾倒ぶりに、同ジャンルにおけるトッププロデューサーたちは複雑な思いを抱く場合もあるという。それは海外で高い評価を得ながらも、本国では見過ごされてきたアメリカのジャズのミュージシャンたちを思わせる。「海外での仕事が評価されるたびに、自分の居場所はここじゃないのかもしれないって思うの」ケリーはそう話す。

しかし現在、そういった状況が大きく変わりつつある。昨年10月、BTSは『DNA』で全米Hot 100にランクインした初のK-popのアーティストとなり、その2ヶ月後には『マイク・ドロップ』をトップ40にランクインさせた。Youtubeの人気ビデオランキングTop 100においても、K-popのクリップはもはや常連となっている(最近ではモモランドの『BBoom BBoom』やアイコンの『ラヴ・シナリオ』等)また4月14日付のビルボードチャートでは、ネット上の反響が如実に反映されるSocial 50において、上位8曲のうち7曲をK-pop勢が占めていた。



アメリカにおけるK-pop市場の拡大が、音楽業界のメインストリームにハーモニーとメロディの復権をもたらす可能性は否定できない。「アメリカはR&Bを生み、90年代にはそれをヒップホップと融合させてみせた」ケリーはそう話す。「K-popを通じて、私たちはその魅力を再発見しつつある。彼らを見てると、『あんたらが生みだしたドープなやつを拝借させてもらったよ、だってこれって今でも超クールだからさ』なんて言われてるような気がするの」

K-popの隆盛は、今もブリッジにこだわるR&Bの作曲家やプロデューサーたちにとって追い風となるかもしれない。「今後はK-popアクトだけじゃなく、アメリカのアーティストたちも本物のR&Bを志向するようになってくれたらって思う」ケリーはそう付け加える。「でもって、それでガッツリ稼げるようになったら最高ね」


Translated by Masaaki Yoshida

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