カニエからビットコインまで、ジャレッド・レトが語る現代のアメリカ

サーティー・セカンズ・トゥ・マーズのジャレッド・レト(Photo by Piczo)

サーティー・セカンズ・トゥ・マーズのニューアルバム『アメリカ』が、全米チャート2位に輝くなど注目を集めている(日本盤は5月23日リリース)。近年は『スーサイド・スクワッド』や『ブレードランナー2049』といった話題作に出演するなど、俳優・監督としての顔を併せ持つ中心人物のジャレッド・レトが、いま思うことを赤裸々に語った。

サーティー・セカンズ・トゥ・マーズの5枚目となる新作を、バンドのヴォーカリストであるジャレッド・レトは「どちらかというと……そうだな、含みのあるタイトル」と説明する。彼は冗談で言っているわけではない。だって、タイトルは『アメリカ』なのだから。また、今作はこれまで以上にエレクトロニクスが多用されていて、2002年にリリースされたセルフタイトルのデビュー・アルバム以来、最もポップス寄りのアルバムらしい。さらにホールジー、エイサップ・ロッキーがゲストで、ゼッドのプロデュース曲も1曲収録されている。

「ビッグで派手なギター・アンセムである必要はないよ」とレト。彼は30STMでアリーナ・コンサートを行うため、イタリアから帰国したばかりだ。「ずっと前からアメリカン・ドリームやアメリカをコンセプトにしたアルバムを作りたかった。アルバムを半分作り終えたところで、“今、そのアルバムを作っている”と思ったんだ」と彼は語った。

―シングル「ウォーク・オン・ウォーター」の歌詞に「悪魔と愛を交わすのは痛い」という一節がありますが、これを説明してくれますか?

ジャレッド:ワニの背中に乗りたいウサギが出てくる古いおとぎ話だよ。最後にワニがウサギを食べてこう言うんだよ、「俺はワニだぜ、何を期待してたんだ?」って。つまり、悪魔と取り引きするときには結末はある程度わかるってこと。「ウォーク・オン・ウォーター」は俺たちが生きている今の時代について歌っているよ。

―もしかして、その悪魔は例の卵型の部屋にいますか?(※卵型の部屋=大統領執務室のこと)

ジャレッド:一つの例としてそう考えることもできる。この曲をパリで1万5千人の前で演奏したら、観客が本当に大きな声でこの曲を歌ってくれて、俺は仰天した。アメリカについて書いた歌なのに、同じ不安が世界中で起きているのさ。



―今作でエレクトロニック・サウンドを多用することにした理由は?

ジャレッド:エレクトロニックなミックスが昔から大好きだった。それこそ、デペッシュ・モードでも、ザ・フーでも、ピンク・フロイドでも、曲が到達すべき場所に到達できるようにシンセサイザーなどのテクノロジーを使ってきたよね。それに、最近の音楽では、ラウドなシンバルや歪んだギター・サウンドが上手く表現されていない。今、この2つの音量を上げたら、耳から血が出ちゃうよ。

―それは、何でもかんでも必要以上にラウドにマスタリングされるのが原因では?

ジャレッド:まさしくその通りだ。昔はドライブ中にツェッペリンやニルヴァーナなんかを音量を12まで上げて聞くのが楽しかったけど、今では文句を言われる。耳をつんざくような明るすぎるサウンドになっているからね。これって最近の音楽に蔓延しているスタイルと関係あると思うよ。

―最近のポップスやヒップホップでいいと思うものは?

ジャレッド:カニエの大胆さはいつも刺激的だ。ここ数年ずっと気に入っている曲がファーザー・ジョン・ミスティの「Bored in the U.S.A.」。あれほど真実を語る曲は久しぶりに聞いた。大雑把に言えば、世界で一番ヒットしている曲っていうのは楽器が3つしか使われていない。それも、声も楽器とカウントしてね。今は音楽的にミニマリズムの時代で、バンドにとってはそれがマックスなサウンドという時期がしばらく続いている。だから、新たな領域に踏み込んで、既存のルールを壊すのが楽しいんだよ。

Translated by Miki Nakayama

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