80年代幻の名作「スパイナル・タップ」34年を経て日本初公開:最高に笑えるロック映画の裏側

1970年にマッキーンはロサンゼルスに引っ越し、シェアラーが在籍していたCredibility Gapという風刺コメディグループに合流した。このグループはその日のニュースを発端にコメディを構築するという手法を取っていた。同じ頃、ゲストはナショナル・ランプーンに合流して、Radio Dinner、Lemmings、That’s Not Funny、That’s Sick! などで活躍していて、ライナーは『All in the Family』のミートヘッド役を演じていた。

マッキーンは1976年にCredibility Gapを脱退し、『ラバーン&シャーリー』のレニー役を得た。シェアラーは映画へ参入し、映画『Real Life(原題)』(1979年日本未公開)の脚本を共同執筆し、『One-Trick Pony』(1980年、日本未公開?)、『The Fish That Saved Pittsburg』(1979年、日本未公開?)『ライト・スタッフ』(1983年、劇場公開)に出演した。『ライト・スタッフ』では宇宙飛行士をリクルートする政府の役人の一人を演じている。また、1979〜1980年シーズンのサタデー・ナイト・ライブのキャストの一人でもあった。一方、1975年にナショナル・ランプーンを離れたゲストは、テレビスペシャル『The Lily Tomlin Special』の脚本を共同執筆して主演も務め、この作品でエミー賞も受賞した。そのあと『Chevy Chase Special』も手がけている。

ゲストが1974年にはナイジェル・タフネルのキャラクターを思い付いたとは言え、彼ら4人がロックの風刺映画を作ろうと話し合うようになったのは1978年だった。当時、ライナー、ゲスト、シェアラー、マッキーンの4人はABCのスペシャル番組『The TV Show』でロックンロールのパロディを作っていて、この番組内でウフルマン・ジャックを真似たライナーがスパイナル・タップというバンドを世界に初めて紹介した。彼らは「Rock and Roll Nightmare」という曲を演奏している。

コメディ番組のコント以上のネタがあった4人は、マーブル・アーチというプロダクション会社を説得して“長めのトレーラー”を作る資金を提供してもらうことにした。しかし、デモの最初の20分が完成する頃にこの会社が破産してしまって、その後、資金を提供者を見つけるまで2年かかったのである。

「このプロジェクトは何度も死にかけた」とロブ・ライナーが述べた。彼はプロデューサーのカレン・マーフィーとともにこの作品を必死に売り込んだ。「文字通り、僕たちはデモのフィルムを小脇に抱えて、コロンビア、MGM、20世紀、オリオンと配給会社を順番に回ったよ。ほんと、あらゆる会社に出向いた。でも、どの会社もこの作品の良さに気付かなくてね。だからカレンに言ったんだ、『万が一にもこの映画が完成したら、僕たちはフィルムを小脇に抱えて配給会社を回ったって取材で言うことができる。今、本当にそうしているんだから。これまでコメディの台本で言っていたことを、今、現実にやっているじゃないか』ってね」と、当時の状況を説明してくれた。

映画『スパイナル・タップ』は、この(1984年)4月に25都市で公開され、ちょっとしたヒットとなっているが、ゲスト、マッキーン、シェアラーはすでに次の作品の構想を練っていると言う。これは、かつて大人気だったフォーク・トリオの復活劇のパロディだ。マッキーンが説明する。「60年代初頭に人気を博した30年代後半の連中で、もう10~12年くらい顔を合わせていないトリオの話だ」と。

すでにシーンも思い描いているらしい。ゲストが「楽器はコントラバス、バンジョー、ギターで、60年代のフォーク・ソングを……」と言って、いきなりグレン・ヤーブロー風の深く響く声で「昨夜夢を見た、彼女がそこに立っていた…」と、歌い出した。

「このトリオはかつて大金を稼いだグループだ」と、マッキーンが付け加える。

「3人の頭を坊主にしてピーター・ヤローっぽくしたいと思うんだ。ひげ面で、タートルネックを着て、腹が出ているって感じがいいね」と、ゲストも風貌を描写してくれた。


スパイナル・タップ
6月16日(土)より新宿武蔵野館他全国ロードショー
監督:ロブ・ライナー  製作:カレン・マーフィ
出演:ロブ・ライナー、マイケル・マッキーン、クリストファー・ゲスト
1984 年/アメリカ/83 分/ビスタ/原題:THIS IS SPINAL TAP
提供:キングレコード  配給:アンプラグド
http://spinaltap.jp
©1984 STUDIOCANAL All Rights Reserved.

Translated by Miki Nakayama

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