ブルース・スプリングスティーン『闇に吠える街』あなたが知らない10の真実

6. 「闇に吠える街」、「レーシング・イン・ザ・ストリート」、「バッドランド」は曲名が最初に決まっていて、歌詞はスプリングスティーンがあとから作ったものだった。

どんどん映画にのめり込んでいったことが幸いしたのだろう。スプリングスティーンはそれまでと異なる曲作りの方法を『闇に吠える街』で試している自分に気づいた。彼はドラマチックな響きのある曲名をあれこれノートに走り書きして、そこから曲を生み出そうとしたのだった。「例えば『レーシング・イン・ザ・ストリート』のような曲名を選んで曲を作ろうとする。このタイトルは曲にするのに苦労するんだよ」と、2010年のローリングストーン誌の取材でスプリングスティーンが説明している。「でも、この曲名のようなことが70年代のアズベリーの若者文化で、車文化と深くかかわっていたんだ。当時、土日にストーン・ポニーに行くと、パワーアップしたマッスルカーが集まっていたのさ」。

「そんな環境だったからこのタイトルを思いついて、このタイトルに合う曲があるか探してみた。『バッドランド』は最高のタイトルだけど、タイトルを台無しにする曲になる可能性もあった。でも、とにかく、この曲名に合うと思う曲ができるまで作り続けたのさ。『闇に吠える街』も同じ。この曲名がまずあって、『この曲名に合う曲を作らないとダメだ』と思ったわけだ。このやり方が自分でもかなり得意だったね。作っているものに集中して考えるのが苦ではなかったのさ」

7. 「バッドランド」のメイン・リフはアニマルズの「悲しき願い(原題:Don’t Let Me Be Misunderstood)」から拝借した。

スプリングスティーンはこれまで何度もアニマルズに敬意を表している。インタビューで彼らの曲をワンフレーズ歌ったり、ブリティッシュ・インベージョンの一端を担ったヒット曲「朝日のない街(原題:We Gotta Get Out of This Place)」や「It’s My Life」をコンサートで歌ったりしている。「彼らは60年代に出現した最高のビート・グループの一つだと思う者もいる」と、2012年のSXSWの基調演説で述べている。「でも俺にとってのアニマルズは天啓だった。つまり、俺が音楽を本気で意識した最初のレコードだったんだ」。

同じ基調演説の中で、スプリングスティーンは『闇に吠える街』にアニマルズが影響していることも言及した(曰く「『バッドランド』や『闇夜へ突走れ』と、アルバム『闇に吠える街』はアニマルズでいっぱいなんだよ、わかるか?」)あとで、「バッドランド」のメイン・リフとアニマルズの1965年のヒット曲「悲しき願い」のリフをギターで再現してみせた。そして「ほら、まったく同じリフだろう?」と、この2曲のイントロ部分をギターで交互に弾きながら続けた。「よく聞けよ、お前たち。これが成功する盗み方だ。わかったか?」と続けた。

Translated by Miki Nakayama

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE