XXXテンタシオン殺害の衝撃、17歳でデビューした次世代ラッパーの歩み

オンフロイの台頭は彼自身の逮捕記録と密接に関係している。シーンに飛び出したオンフロイには数々の犯罪容疑がかけられていて、少なくとも彼の魅力の一つは、凶器を使った強盗(2015年に「Look At Me!」を公表する前に犯した犯罪)から逮捕時の公務執行妨害まで、数々の重罪を犯したことを彼自身が隠さずに公表していたことだった。事実、No Jumperのポッドキャストで少年拘置所時代の乱暴な時期について赤裸々に語り、名声が上がるにつれて、彼が放つ言葉の信憑性が一番の魅力となってきたのである。

そして、遂には、彼に課された容疑が自身にとっての足かせとなり始めた。2016年10月には、元恋人を「被害者の目が見えなくなるほど」殴った容疑で検挙される。これをきっかけに他の暴行事件も発覚し、最初にPitchforkの犯罪捜査コーナーに記事が掲載され、のちにMiami News Timesにも掲載された。

XXXテンタシオンに犯罪の容疑がかけられたため、Spotifyが一時的に主要ラップ・プレイリストRapCaviarから彼の楽曲を削除することになった。このとき、R・ケリーも新たにできた「ヘイト・コンテントとヘイト助長に対するポリシー」に引っかかって同プレイリストから削除されている。しかし、のちにこのポリシーは撤回され、現時点で「Sad!」はRapCaviarにまだ入っている。

しかし、これらの犯罪の容疑はXXXの人気にほとんど影響しなかった。2016年、「Look At Me!」の人気は衰えることなく増す一方で、リリースされた他の楽曲では、彼が人気を後押ししたノイズ・ラップ以外にも、グランジ風のロックやコンフェショナル・エモ風の歌ものという、アーティストとしての多様さも見せつけた。SoundCloud Rap周辺の人気が高まるにつれて、オンフロイは法的なトラブルに巻き込まれるようになるが、そのたびにSNSで論争を刺激する投稿をする手法で、再びスポットライトを浴びる場所に復帰していた。

2017年にはアンダーグランドで人気を博していた曲が遂にメインストリームでブレイクする。インターネット上で大ヒットした1年後、やっと「Look At Me!」が公式にリリースされ、トップ40入りするヒットとなった。それ以降、オンフロイはさらに4曲のトップ40ヒットを飛ばしている。その中には「Sad!」もあり、この曲はホット100で最高7位になった。さらに3月には彼のアルバム『?』がビルボードのアルバムチャートで初登場1位となり、リリース初週でストリーミングされたアルバム相当数は10万6千枚だった。

また、2018年初めに(拘置所ではなく)自宅監禁を言い渡されたが、裁判官は彼のツアー・スケジュールを考慮して外出を許可するに至った。

XXXテンタシオンの死を受けて、彼の音楽仲間たちはSNSで追悼の言葉を綴っている。カニエ・ウェストはTwitterにXXXテンタシオンの写真を投稿し、「安らかに眠ってくれ。お前がまだこの世にいた間に、俺がどれだけお前にインスパイアされたか言ったことがなかったな。お前の存在に感謝しているよ」とキャプションをつけた。

J・コールもTwitterで「本当に動揺している。(彼には)とんでもない才能と限界知らずのポテンシャルと真人間になろうとする強い意志があった。彼の家族、友人、ファンに神のご加護を」と投稿して、「Look At Me!」で有名になったラッパーの死を悼んだ。

Translated by Miki Nakayama

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