ローリングストーン誌が選ぶ、2018年上半期ベストムービー・トップ10

『犬ヶ島』

ウェス・アンダーソンによる、前代未聞のストップモーション・アニメーション作品。検疫される犬たちの姿は、まさに現代の政治状況を写す鏡だ。野暮な連中は、アンダーソンの日本かぶれが文化の盗用にいたらしめた、などと主張するが、おいおい。彼の技能と愛情あふれるまなざしの相乗効果から生み出されたのは、真の芸術作品以外の何物でもない。現在日本公開中。

『クワイエット・プレイス』

ジョン・クラシンスキー監督は身の毛もよだつスリラー映画のなかで、手に汗握る緊迫感を持続させることに成功し、映画監督としての支持基盤を確立した。モンスターたちが文明社会を支配した世界で、4人家族――クラシンスキーと実の妻エミリー・ブラントが夫婦を演じている――が生き延びる道は、決して音を立てないこと。ひとたび音を立てれば怪物たちが目を覚ます。実質的にサイレンス・フィルムの様相を呈したこの作品は、俳優から監督に転向したクラシンスキーの真骨頂。まさに離れ業だ。日本では、9月28日から全国公開予定。


『The Rider(原題)』

北京生まれの映画監督クロエ・ザオは、スクリーンの上に詩を綴った。ラコタ族のカウボーイを演じるのは、実際にサウス・ダコタのカウボーイで馬の調教師を務めるブレイディ・ジャンドロー。馬に頭を蹴られ、天職の仕事を続けられなくなった男を熱演している。ザオ監督が描く文学的な作品は、人間の条件の本質を深くえぐり出す。

『ビューティフル・デイ』

どうしてもホアキン・フェニックスが優れた俳優だと確信を持てない皆さん。まっすぐ映画館へ行って、この映画を見るべし。殺し屋となった元帰還兵が魂の救済を求め、誘拐された少女の救出に乗り出す物語。フェニックスとタッグを組むのは、スコットランド出身の脚本家兼監督のリン・ラムジー。2人のアーティストはいままさに円熟期を迎えた。日本では現在公開中。

Translated by Akiko Kato

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