ポール・マッカートニーの新作『エジプト・ステーション』、プロデューサーが語る制作秘話

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今秋9月にリリースされる、ポール・マッカートニーの17枚目となるソロアルバム『Egypt Station(エジプト・ステーション)』。本作のプロデューサーのグレッグ・カースティンが制作エピソードやマッカートニーとの出会いなどをローリングストーン誌に語ってくれた。

「ポールは自身のソングライティングの限界に挑戦しようとしてた」ー グレッグ・カースティン


来るポール・マッカートニーの新作、『エジプト・ステーション』の大半はロサンゼルスとサセックスでレコーディングされているが、彼が楽曲を仕上げる上で不可欠な場所は別に存在する。言うまでもなく、それはロンドンのアビー・ロード・スタジオだ。同作のプロデューサーを務めたグレッグ・カースティンは、ビートルズが曲の大半を生み出したその空間に足を踏み入れた瞬間、言葉にならない感動を覚えたという。「夢じゃないかって、自分の頬を何度もつねったぐらいさ」彼はそう話す。「スタジオの隅には、幾つものビートルズの曲で使われたミセス・ミルズのピアノ(1905年製 Steinway Vertegrand)があった。通路に置いてあったピアノでポールが何気なく『レディ・マドンナ』を弾き始めた時は、皆がぞろぞろと集まってきてたよ」

これまでにアデルやベック、フー・ファイターズ等の作品を手がけてきたカースティンだが、『エジプト・ステーション』(9月7日発売)の制作に費やされた過去2年間において、アビー・ロードの廊下でのパフォーマンスは忘れられない思い出のひとつだという。本誌の電話インタビューに応じた彼は、幼少期からのアイドルであるビートルズへの思い、マッカートニーとの出会い、新作をプロデュースするに至った経緯、そしてアルバム収録曲について語ってくれた。

ー10代の頃からビートルズの大ファンだったそうですね。

そうなんだ。ビートルズは僕にとって最も重要なアーティストさ。楽曲はバラエティに富んでいて、その奥深さは計り知れない。僕はいろんな音楽に触れながら育ったけど、ビートルズとビーチ・ボーイズは完全に別格だった。ロック一辺倒じゃなくて、ジャズやイギリスのオールディーズなんかの要素を取り入れた曲もある。そういう懐の深いソングライティングに、僕は夢中だったんだ。

ー当時最も気に入っていたビートルズのアルバムは?

今も昔も変わらず『リヴォルバー』だね。他のアルバムに傾倒した時期もあったけど、僕にとって不動のナンバーワンはやっぱり『リヴォルバー』だ。

ー話題を近年に移します。ポール・マッカートニーとの出会いについて教えてもらえますか?

ある映画の曲を録るために、彼と一緒にスタジオに入ったんだ。発表されるのかどうか分からないんだけど、あるアニメーション映画のためにポールが書き下ろした曲を、ブラスセクションやコーラス隊を含むフル編成のバンドと一緒に、丸一日かけてスタジオでレコーディングしたんだ。その曲が今後どうなるのは知らないけど、あのセッションにはポールと僕の相性を確かめるっていう目的もあったんじゃないかな。それが僕らの出会いだよ。



ーその映画のタイトルはご存知ですか?

本当に知らないんだ。ある本に基づいたアニメーション映画だってことは聞かされているんだけどね。最低限の情報しか与えられなかったんだ。

ーそのセッションが行われたのはいつですか?

3年前か、もしかしたらもっと前かもしれない。僕は物事の時系列を整理するのが苦手なんだ。でも今作の制作が始まる1年以上前だったことは確かだよ。

Translated by Masaaki Yoshida

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