ミュージシャンはどのように稼いでいるか? 複雑化する著作権ビジネス

ファッション、マーチャンダイジング、その他のダイレクト・セールス

香水、グッズ、アパレル用品など音楽以外の製品の販売は、過去何十年にも渡りアーティストにとって簡単に稼げる戦略だった。しかしデジタル時代のミュージシャンは、コンサート会場に設営する物販テントやウェブサイトに表示する広告など、従来のやり方から発展させた独自のクリエイティブな方法を取ることもできる。

アーティストたちはまた、InstagramやTwitter等のソーシャルメディア以外に作ったコミュニケーションのための特別なチャネルやクラウドファンディングを通じ、オーディエンスから直接収入を得る方法を模索しはじめている。例えば、TV番組『ザ・ヴォイス』のスター、アンジー・ジョンソンはアルバム製作のため、Kickstarterを通じて約3万6000ドル(約400万円)を集めた。多くのグループが、自分の音楽に関連する専用アプリやサブスクリプション・パッケージを提供したり、アーティスト主催のフェスティバル、メール配信、楽曲の限定リリース等の特別プロダクトを販売し始めている。独自路線を歩むピットブルもその一例だ。

全てのお金の行き先

これまで紹介してきたのは、現代のアーティストが稼ぐ全ての方法では決してない。路線を変更したり、他のアーティストのプロデューサーやソングライターになるのは、従来よりもずっと簡単になっている。例えば、アーティストへの楽曲提供者から自分でもレコーディングするようになったビービー・レクサや、アメリカのR&Bのヒットメイカーたちによる韓国のKポップ業界への進出などだ。海外の著作権関連法の絡みでロイヤリティの分配は複雑だが、それでも大きな収入をもたらす。現代のミュージシャンには、従来よりも非常に多くのバラエティに富んだ収入源を得る可能性がある。

にもかかわらず、一般的なアーティストは依然として火の車の状態である。

最近の調査によると、アメリカのミュージシャンは、国内音楽業界の売上全体の10分の1しか得られていないという。そのように率の低い理由のひとつは、ストリーミング・サービスにある。ストリーミング・サービスは音楽業界全体の再活性化に貢献しているものの、ドレイクやカーディ・Bなどチャート上位のアーティストにでもならない限り、アーティスト自身の利益は薄い。Spotifyのある会社資料によると、同社からアーティストへ支払われる金額は、1ストリーミングあたり平均0.006〜0.0084ドル(約66〜93銭)だという。Apple Music、YouTube Music、Deezerやその他のストリーミング・サービスも同レベルの金額だ。ビッグ・アーティストがミリオンダラーを手にする一方で、弱小アーティストは生活費すら稼げない、という勝者総取りのシチュエーションを生んでいる。過去を振り返れば、音楽業界にはどの時代も同様のダイナミクスが働いていたという人もいるかもしれないが、規模は劇的に大きくなっている。

ストリーミング・サービスに加え、音楽業界にはあまりにも多くのブローカー、中間業者、その他第三者が存在することも、アーティストの実入りが少ない理由のひとつといえる。ストリーミング時代のロイヤリティがブラックボックス化されていることはもちろん、メタデータの欠陥や、さまざまなサービス間で正確な数字をレポートする方法の不備等による抜け穴のため、アーティストへ支払われてないお金も多い。その額は数十億ドル規模に膨れているという。「お金の流れを追ってみると、アーティストへは約10%が渡っていることがわかった。非常に低い数字だ」とCitiグループのメディア・ケーブル・サテライト調査員のジェイソン・バジネットはローリングストーン誌に語った。「若きアーティストは、音楽業界の悲惨な現実やお金の流れを理解しておらず、彼らが大金を手にすることはまずないだろう。ビジネス全体から、信じられないほど大きな金額が漏れ出している」

良いニュースもある。音楽業界はストリーミング・サービスを最大の収入源と認め、その状況に対応しようとしている。多くのアナリストや専門家は、新たな収入源として成り立つと見ている。法が改正され、新たなロイヤリティの交渉、吸収合併や整理により、ミュージシャンに少しでもお金が入ってくるようになり、やがては利益の上がるものとなることが期待される。悪いニュースは、それがいつ実行に移されるか誰も知らないことだ。


Translated by Smokva Tokyo

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