メタリカが語る、こだわりのウイスキー造り「超低周波のサウンドを樽に聴かせるんだ」

蒸留マイスターのデイヴ・ピッカレルとメタリカ(Andrew Macpherson )

メタリカが、ウイスキー「Blackened」を発表した。なんでも深い琥珀色のウイスキーを作るためにメタリカの音楽を大音量で樽に聞かせる手法をとっているという。バンドメンバー本人たちと蒸留マイスターが蒸留工程についてローリングストーン誌に語ってくれた。

ラーズ・ウルリッヒはメタリカの評判をよく知っている。「かつてメタリカと“アルコホリカ”、つまり俺たちの飲酒癖が頻繁に話題にのぼった時期があった」とラーズ。「しかし、当時の俺たちは金を持っていなかったから、いわゆるホワイトラベルの不味いビールやウォッカ以上の酒は買えなかった。ロサンゼルスに行って(1989年の)アルバム『メタル・ジャスティス/… and Justice for All』と『メタリカ』を作ったあたりから、ウイスキーやジャックダニエルを飲む機会が増えた。俺たちにとって成功の第一歩がウイスキーだったのさ」と。

バンド全員が劇的に飲酒量を減らした現在、彼らはウイスキー産業に乗り出すことにした。約1年半前、メタリカはSweet Amber Distilling Co.という酒造会社を立ち上げ、もうすぐ最初の作品「Blackened」を出荷する予定なのだ。これは北米産のバーボン、ライ麦、ウイスキーをブレンドしたもので、ブランデー樽で熟成させた酒だ。彼らは「観客とつながる新たな方法」を見つけるために、バンドのマーチャンダイズの延長線としてウイスキー産業に参入することにしたと、ドラマーが教えてくれた。

彼らの一番関心事は、ウイスキーが「年寄りの飲み物」とみなされていることだった。「俺が若造の頃、ウイスキーは若者の飲み物じゃないって思われていた」と、ウルリッヒが言う。「このBlackenedが、21や22の若者が『親父や爺さんの飲み物じゃない』と言って受け入れてくれると嬉しいね」と。メタリカが手を組んだのがデイヴ・ピッカレル。彼はもともと化学の教授だったWhistlePig(ライ麦ウイスキー)の蒸留マイスターで、かつてバーボンウイスキーのメイカーズマークで仕事をしていた。この蒸留マイスターがメタリカのウイスキーをメタリカならではの作品へと仕上げる手伝いを行った。

「ウイスキーを作ったことのある人の助けを借りてウイスキー産業に参入して、瓶にメタリカのラベルを貼って売り出すってことはしたくなかった」と、ウルリッヒが説明する。「自分たちのファンの目を真っ直ぐに見て、『俺たちの手でゼロから作った。良し悪しは別として最低でもメタリカ的タッチがちゃんと入っている』と言えるものを作ることが重要だと思ったのさ」。

ボブ・ディランからハンソンまで、自分のブランドの酒作りに着手するアーティストが増える中、メタリカはBlackenedにメタリカならではの特徴を持たせる独自の方法を見つけた。ウイスキーの熟成を早めるために音波を使う蒸留家がいる。ピッカレルはこれを「樽を幸せな気分にさせるため」と言う。Sweet Amber社は現在特許出願中の「ブラックノイズ」と呼ばれる音波強化プロセスを生み出した。これは低周波を使って大樽を振動させて風味を深める手法だ。低周波振動を起こすのは、もちろんメタリカの音楽である。

「俺は何でも最初に疑うタイプなんだ」とロバート・トゥルージロがローリングストーン誌に語ってくれた。「一度疑ってかかってから、それについて調べて確認するってタイプ。このプロセスを一度通らないとダメでね。今回のブラックノイズは5ヶ月くらい前に納得したよ」。そして現在の彼はこのプロセスを『マッシュピット』と呼ぶ。理由は「詳しくは知らないけど、サウンドと振動とミックスされる分子構造がある」からだと言う。

Translated by Miki Nakayama

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