ザ・キラーズ「ミスター・ブライトサイド」に隠された制作秘話

ザ・キラーズのブランドン・フラワーズ(Photo by Christian Bertrand / Shutterstock)

先月の武道館公演も記憶に新しいザ・キラーズ。フロントマンのブランドン・フラワーズが、実生活の別れがもたらした大ヒット曲「ミスター・ブライトサイド」について語る。

「裏切りが良いことに思える人なんているのかな?」と、バンドがブレイクするきっかけとなったシングル「ミスター・ブライトサイド」の話をしながら、ザ・キラーズのブランドン・フラワーズが笑いながら問いかけた。そして「最初にデモを聴いたときに腕の毛が逆立ったのを今でも覚えているよ」と。

このシングル曲をリリースしてから15年が経過した。元カノが他の男と一緒にいる姿を見たフラワーズの傷心と報われない恋を歌った曲だ。キラーズにとって最初のリリースとなった「ミスター・ブライトサイド」は、明るいポップチューンというよりも、その辛辣さが逆に奏功していた。この曲はアメリカとイギリスのチャートで10位となり、それ以来アメリカではダブル・プラチナ、イギリスではトリプル・プラチナとなっている。



フラワーズがこの曲を作ったのは、初めての真剣な付き合いが終わろうとしていたときで、19歳か20歳だったという。当時、彼は姉妹から間借りした月200ドルの部屋に住んでいて、突然インスピレーションが湧いてきたらしい。「この曲はノートの紙切れにペンで書いたよ」と、物憂げな表情でフラワーズが言う。「当時はまだ曲作りに携帯電話は使っていなかった。最近は紙とペンで曲作りする人ってほとんどいないよね」

この曲を作った頃にフラワーズはギタリストのデイヴ・キューニングと知り合った。キューニングはのちにこの曲の音楽になるパートを既に書き上げていた。2人はロボットのように味気ないドラムマシンを使って、この曲の大雑把なデモを作ったのである。このデモ音源は2013年にリリースされたコンピレーション・アルバム『ダイレクト・ヒッツ』に収録されることになる。デモを作り始めると曲の構成が姿を表した。「2つ目のヴァースを書いていなくて、仕方なく最初のヴァースをもう一度歌ったのさ」と、この曲が反復する理由をフラワーズが説明する。「2番目のヴァースでは単語を2〜3つ変えたし、強調するポイントも変えた。この時点ではその場しのぎだったけど、こういうのが上手く行くこともあるってことだね、たぶん」と。このデモは不気味で、フラワーズはヴァースの途中でほとんど叫んでいるようだが、そこに彼らが表現しようとしていた赤裸々な感情が見て取れる。

Translated by Miki Nakayama

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