1971年のニール・ヤング、「アラバマ」レコーディング回想録

1971年、ニール・ヤングはザ・ストレイ・ゲイターズを従えて、アルバム『ハーヴェスト』収録の「Alabama/アラバマ」を自宅の農場でレコーディングした。写真は1974年のヤング。(Photo by Gijsbert Hanekroot/Redferns)

ソロ・アルバム『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』とクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングのアルバム『デジャ・ヴ』が大ヒットしたニール・ヤングは、1970年の秋までに夢のマイホームを買うのに十分な金を得た。

そして、米カリフォルニア州ラ・ホンダにある140エーカー(約57万平方メートル/東京ドーム12個分)の農場を34万ドル(当時の固定レートで約1億2240万円)で購入したのだった。「絶対に奪われることのないように全財産を注ぎ込んだ」と、ヤングは父親に言ったという。

翌年の1971年、彼は4枚目のソロ・アルバム『ハーヴェスト』に集中した。それまでのレコードはナッシュビルとロンドンでレコーディングしていたのだが、このときは新しいバンド、ストレイ・ゲイターズを自分の農場にある古い納屋に呼び寄せて、「Words/歌う言葉」「Are You Ready for the Country?/国のために用意はいいか?」「Alabama/アラバマ」を録音したのである。ちなみにストレイ・ゲイターズは、スティールギターがベン・キース、ベースがティム・ドラモンド、ピアノがジャック・ニッチェ、ドラムがケニー・バトレーで構成されていた。



上の動画でレコーディング風景が見られる「アラバマ」は、本質の部分で『〜ゴールド・ラッシュ』に収録されていた「Southern Man/サザン・マン」の続編といえる楽曲で、アメリカ南部の人種差別を歯に衣着せぬ辛辣な言葉で非難している。「白いガウンをまとっている年寄り連中を見ろ」と歌っているのだ。言うまでもないが、アメリカ南部全域を人種差別者と決めつけたことが多くの住民を憤慨させた。

この曲への反応で最も有名なものはレーナード・スキナードが作った「Sweet Home Alabama/スウィート・ホーム・アラバマ」だ。<そうだな、ニール・ヤングが思い出してくれたらうれしいよ/南部の男にもう彼は必要ないってことを>という歌詞で反応した。ただ、スキナードのロニー・ヴァン・ザントはバンドに悪意はまったくなかったと言い、1977年に「俺たちは『スウィート・ホーム・アラバマ』を冗談で作ったのさ。ほんと、何も考えていなかったし、歌詞も思いついたままだった。腹がよじれるほど大笑いしながら『マジでオカシイよな』って。(中略)俺たちはニール・ヤングが大好きだし、彼の音楽も大好きだし……」と語っている。

ここ何年間か『ハーヴェスト』関係の記録映像が表に出てきている。直近で公開されものは、ヤングが8月に自分のアーカイヴ・ウェブサイトに投稿した動画で、アルバム制作とストレイ・ゲイターズのメンバー全員が既に他界している悲しい事実を記したエッセイも一緒に公開した。彼は「かつての友人たちが懐かしい。彼ら全員が亡くなってしまったが、彼らがまだこの地球上にいたときに、私と共に作った美しい音楽だけは残っている。彼らと知り合えたこと、そして彼らと一緒に音楽を作れた私は本当に幸運だった」とエッセイに書いている。

最近のヤングは東海岸で6公演を行った。このコンサートでは「The Last Trip to Tulsa/タルサへの最後の旅」「アバウト・トゥ・レイン」など、長年ライブで演奏しなかったレア曲をフィーチャーしたものだった。この6公演で「アラバマ」は演奏しなかったが、38年の時を経て2015年からヤングはこの曲を再びライブで演奏するようになっている。



Translated by Miki Nakayama

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