米マンハッタンを拠点とするポスト・モダン派のソングライター=ステフィン・メリットは、99年に『69ラヴ・ソングス』という3枚組のCDをリリースしてからしばらく鳴りを潜めていた。この10年近くの間、彼は主にザ・6thやフューチャー・バイブル・ヒーローズなどのサイド・プロジェクトに力を注ぎ、映画のサウンド・トラックやTV番組の音楽担当など、ほとんど自己満足で完結するようなものが中心だった。今回の彼のアルバムは15年にわたって彼が強いこだわりを持ってきたことがわかる。甘い旋律がちりばめられたサウンドを軸にしたダーティかつラウドなロック・アルバムだ。アルバム・タイトルが示すように、ディストーションが多く使われている。  リード・トラックである「スリー・ウェイ」はイントロのホワイト・ノイズと強烈なロック・リフが印象的な曲。ピアノやギターの存在感が増し、ドラムもガンガンに鳴っている。そのほかの曲はチープなジョークと皮肉が満載。『69ラヴ・ソングス』に続いて70曲目になるはずだった壊れたラヴ・ソング、「トゥー・ドランク・トゥ・ドリーム」で歌われているのは、ステフィンが体験したニューヨークでの失恋からの逃避なのだろうか。いずれにせよ、このアルバムは彼が作ったアルバムのなかで2番目にいいアルバムだといえる。つまり僕は褒めているのだ。

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