フローレンスはマシーンだ。フローレンス・ウェルチが5人組のロック・バンドを引き連れて一気に有名になった2年前、 彼女がここ数年にUKから現れたどんなものよりも力強く、特別な存在だということは明らかだった。彼女は月のない夜に、空っぽのハイウェイを駆け下りるトラックのようにラヴソングの中を突っ走る、ケタ外れの馬力を持ったヴォーカリストだ。

2009年のデビュー作『ラングス』でのフローレンス・アンド・ザ・マシーンは、メロドラマ趣味の強靭なロック・バンドだったが、このセカンド・アルバムではさらにスケールが大きくなっている。精霊のようなウェルチの嘆きに満たされ、響きわたるドラムと遠くの雷のようなコーラスに力を与えられた、荒れ狂うバラード。音楽はケルトの民謡やブルージーなロック・ストンプに手を出し、ゴシックやゴスペルにも傾倒しているが、風は決して唸るのをやめない。

これはとても英国的なレコードで、ケイト・ブッシュからスージー・アンド・ザ・バンシーズ、PJハーヴェイまでにいたる、偶像破壊的なUKポップの伝統に則っているが、もうひとりの有名なイギリス人女性っぽさもある。ウェルチがモータウン調のゴツゴツしたバックビートに乗せてゴスペル・ソウル風のヴォーカルを吐き出す、「ラヴァー・トゥ・ラヴァー」を聴いてみてほしい。誰かアデルを思い出した?

『セレモニアルズ』が強烈に喚起させるロック・バンドは、最もビッグなバンドのひとつ、U2だ。フローレンス・アンド・ザ・マシーンは彼らのような本物のバンドで、ガレージ・ロックの絆を、ガレージよりもオリンポス山の頂上に似合いそうな、激しく鞭打つサウンドに変えてしまう。そしてU2のように、フローレンス・アンド・ザ・マシーンには図々しくメロドラマを引き出し、馬鹿馬鹿しさを崇高さに変えてしまう歌手がいる。11年はセイント・ヴィンセントからファイスト、ローラ・マーリングまで、前衛的な女性ロッカーが好調な年だった。彼女たちはフローレンス・ウェルチと同じぐらい、質の高いスターだ。けれども『セレモニアルズ』は、彼女がもっと巨大なロック・スターになれることを示している。アルバムは高揚感に満ちた「リーヴ・マイ・ボディ」のロック・ゴスペルで締めくくられ、ウェルチが超越した光景を歌う。“私は自分の体を離れ/高い場所へ向かう/心を失うの”。それはボノのように大きな感傷と、それに見合うだけの歌声を持った、大きな楽曲だ。

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