The Hunger Games: Songs From District 12 and Beyond

映画『ハンガー・ゲーム』にまだ熱中していないのなら、作品に出てくる12地区が近未来のアパラチア地域の変わり果てた姿だとは思いもしないだろう。そして作品のディテールを構成する要素のひとつとして、劇中で使われているオリジナル曲がある。メタリックなギターで武装したテイラー・スウィフトは、ヒロインに眠るときも片目を開けているようアドバイスし、ニーコ・ケースは、逃げまどう弱者から炎のような強さを持った勝利者へとキャラクターが変身していく様を、渦を巻くように雄大なポップ・サウンドへと昇華させた。良くも悪くも、このアルバムは『ハンガー・ゲーム』ファンによるファンのためのアルバムといった感が強く、サウンドトラックとしては稀な作品だ。アルバムのハイライトとなる曲は、昨年ボン・イヴェールをカヴァーした曲をヒットさせ、ここではゴスがかったピアノ・バラード「ジャスト・ア・ゲーム」を披露する15歳のバーディーといったYouTubeから飛び出してきたばかりのヤング・アダルトたちだ。プロデュースを担当したT・ボーン・バーネットに感謝。アーケイド・ファイアの「エイブラハムズ・ドーター」に溢れる不吉なオーラ、そして60年代のガレージ・モード全開のR.E.M.のようにも聴こえるディセンバリスツの「ワン・エンジン」の電撃的なショック。しかし、この作品に蔓延する物悲しさは、寂寥感の表れというよりもお涙ちょうだい的な感傷に近い。ティーンエイジャーの不毛な抵抗がもう少し表現されていればなお良かったのにと言うのは贅沢だろうか?

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