スーパー・ファズ・ビッグマフ~デラックス・エディション

時は88年、シアトル。当時は一介の弱小インディ・レーベルにすぎなかったサブ・ポップからリリースされたのが、このマッドハニーのデビューEP。当時はまだ“グランジ”という言葉もなく、彼らの存在こそがムーブメントに火をつける導火線の役割を果たしていく。90年代オルタナティヴ・ロックにとって記念碑的な一枚。マッドハニーは、デビュー当時すでにシアトルのインディ界隈では知られた存在だった。パンクとメタルを融合させた音楽性で先駆的な立ち位置にいたグリーン・リヴァー解散後、マーク・アームとスティーヴ・ターナーの2人が結成(ちなみにグリーン・リヴァーの残りの2人はパール・ジャムのメンバーとなる)。ソニック・ユースもファンを公言していた彼らは、サブ・ポップにとっても看板アーティストだった。カート・コバーンを筆頭に、同郷ミュージシャンたちに与えた影響も大きい。ギタリスト2人の気に入っていた歪み系エフェクターの名前をそのまま冠したこのデビューEPは、彼らのキャリアのなかでも初期衝動がそのまま記録されたようなみずみずしい輝きを持っている。シンプルなリフに荒々しいストローク、パンキッシュな叫び。そこには今も色褪せない生々しくノイジィなテンションが宿っている。もともとのチープな音質に代わり、リマスターにより音圧が出ているのもうれしい。アルバムには、デビュー・シングル「タッチ・ミー・アイム・シック」、ソニック・ユースとの共演シングルに収録されていた「ハロウィン」も収録。さらには貴重なデモ、88年当時のライヴ音源も加えたCD2枚組の内容だ。特に、歪みまくったギターが暴れ回るライヴ音源は、全米のインディ・シーンで人気を獲得し、シアトルへの注目を生み出した当時の彼らの熱気を体感できる。オリジナル盤を持っている人も必聴だろう。新作『ザ・ラッキー・ワンズ』のリリース、今年7月に行われるサブ・ポップ20周年記念フェスティバルでは、グリーン・リヴァーの再結成ライヴも予定。結成20年、地道に活動してきた彼らに、再び大きなスポットライトが当たろうとしている。

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