ゴッド・メイド・ザ・レディオ 〜神の創りしラジオ

ブライアン・ウィルソンとザ・ビーチ・ボーイズは16年間一緒にアルバムを作っていないが、彼らの音楽はこれまでにないほどの存在感を示している。昨年リリースされた、ウィルソンの60年代後半の未完成だった作品を収録した『ザ・スマイル・セッションズ』は大変な出来事だったし、2004年にリリースされた『スマイル』もまた然りである。グループのハーモニーはフリート・フォクシーズの合唱とアニマル・コレクティヴのストーナー・ジャムにこだまする。彼らのソーダ・ポップ・ソング形式はインディ・ロックで借用され、その大掛かりなアレンジはジョン・ブライオンやマーク・ロンソンを含む、多くのオーケストラル・ポップ・プロデューサーによる作品で聴くことができる。

『ゴッド・メイド・ザ・レディオ〜神の創りしラジオ』は、まるで皮肉の存在しない、原典とは異なる世界からの送信のように、少々現実離れしたサウンドだ。ここには、ツルツルに磨き上げられたメロディと驚くほどに少年ぽいヴォーカルの12曲が収録されている。しかしながら、このアルバムには暗い影が覆っている。年齢と死がつきまとう時間。それはザ・ビーチ・ボーイズが特に避けてきた問題だ。その意味ではこのアルバムも、昔と変わらぬ、マイク・ラヴの“日のあたるところで楽しもう”とする意図と、ウィルソンのより壮大でより陰鬱なテーマとの間での争いのようだ。これは、同窓会でもあり、ビーチ・ボーイのための鎮魂歌でもあるのだ。

アルバムは、ウィルソン、ラヴ、アル・ジャーディンと長年のコラボレーターであるブルース・ジョンストンやジェフリー・フォスケット(さらにはベテランの同僚であるデイヴィッド・マークスも参加)による言葉では表せない呪文で幕を開ける。まるで教会の礼拝の始まりのようだ。そしてそこから、サテライトラジオが我々の自動車に入り込んでくる以前の日々を歌った、ハーモニーに装飾されたスローなダンスのタイトル・トラックへと流れ込む。「イズント・イット・タイム?」もラヴがフィーチャーされたジャムで、「アイ・ゲット・アラウンド」の拍手に乗せて“昔のように”ダンスしている1曲だ。過去を振り返るようなアルバム前半部分は、ユーモアと自己認識を持ってレコーディングされている。「僕らは再び一緒に活動し/ぼろ儲けする/人生とはおかしなものだ(“We’re back together/Easy money/Ain’t life funny,”)」と、彼らはウィンクしながら「スプリング・ヴァケーション」を歌う。そして、彼らのやる気を軽視する人々に対して、「おい、君に何の関係があるというのか? ハレルヤ(“Hey, what’s it to ya?/Hallelujah.”)」と発言してみせる。

ウィルソンは、アルバムのダークな後半部分でそのリーダーシップを発揮しているようだ。「ストレンジ・ワールド」は、人生に少々困惑していることを告白する。アルバムの歌詞がないイントロは「パシフィック・コースト・ハイウェイ」で繰り返され、そのタイトルは亡き弟のデニス・ウィルソンの「パシフィック・オーシャン・ブルー」を思い起こさせ、そのイメージはハイウェイの終わりを思い浮かべさせる。「太陽の光は色あせ、僕にはほとんど言い残すことはない(“Sunlight is fading and there’s not much left to say,”)」と69歳のウィルソンは、哀愁を帯びたピアノのコードに合わせて歌う。「この人生/独りの方がマシだ(“My life/I’m better off alone.”)」と。アルバムは、ストリングスの好意的な包容と譲歩する木管楽器の「サマーズ・ゴーン」で閉幕する。「僕らは生きて死ぬ/そして自分たちの過去を夢見る(“We live, then die/And dream about our yesterdays.”)。世界ツアーも組まれている結成50周年を記念する再結成企画。そのひとつとなる本作は、ある意味、感傷的で知名度に頼ったノスタルジアフェストではある。しかし、『ペット・サウンズ』に象徴される遺産の上に成り立つ、おそらく最後となるであろう、意欲的なプロジェクトでもある。このアルバムは、明らかに欠点のある偉大なバンドによる、一貫性に欠けてはいるが非常に感動的な作品で、それが達成されずとも志だけは高く持つという意味において、ベストな内容となっている。

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