オーティス・ブルー/オーティス・レディング・シングス・ソウル (コレクターズ・エディション)

この2枚組のCDセットはファンならずともうれしい内容だ。オーティス・レディングのサード・アルバム『オーティス・ブルー/オーティス・レディング・シングス・ソウル』にシングルのB面集、未発表テイク、当時のライヴ音源を加えて、アルバムのオリジナル・バージョンでもあるモノラル録音版とステレオ録音版をまとめてコンパイルした。65年9月にリリースされたこのアルバム。ステレオで聴くのもいいが、この作品はモノラルで聴いても非常に完成度が高い。  それだけではない。このアルバムで達成された偉業といえば、24時間に満たない時間で完成させたことだろう。メンフィスのスタックス・スタジオで、7月9日、10日の早朝にレコーディングは行われた。中断した理由は彼のハウス・バンドであるブッカーT&MG's、メンフィス・ホーンズの面々がライヴの予定が入っていたからだ。  そんな状況のなか、彼の凄さがよく出ているのが、ディキシーランド・サウンドで味つけされたザ・ローリング・ストーンズの「サティスファクション」のカヴァーだ。オーティスも曲中で「サティスファクション」と歌う。アル・ジャクソンとともにオフビートのドラム・ブレイクから入るサム・クックの「シェイク」のカヴァーもいい味を醸し出している。  もちろん、名曲揃いのオリジナル曲も光り輝いている。ブラスの音色が心地よい「オール・マン・トラブル」、男らしさを濃厚に感じさせる「リスペクト」、そしてこの頃、すでに大ヒット・シングルとなっていた「愛しすぎて」を収録している。この「愛しすぎて」で彼はソウル・ミュージック界から距離を置き、独自の音楽性を開花させようとしていた。  急速に発展するレコーディング技術を反映させたこのシングル曲のレコーディング・セッションは、アルバム制作前の6月に行われた。アルバム・リリース当時はすでに大ヒット・シングルとなっていたため収録されず、その後に再発されてから収録されることになった。それまでのオーティスの曲よりもゆったりとしたテンポのナンバーで、彼の天才の片鱗が感じられる。そして67年、彼は飛行機事故でこの世を去ってしまったのだ。

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