4枚目のアルバムである。デビュー作から3作目までの間、毛むくじゃらのギタリストを筆頭にしたルーツ・ロック・バンドとしての地位を確立した。新作のアルバム・タイトルに“イーヴィル”(邪悪)という言葉を持ってきたのは、自分たちでバンドのイメージをぶち壊そうという意思の表れでもある。05年のアルバム『Z』は緩めの実験的要素を含んだものだったが、今回のアルバムではバンド・サウンドを思う存分に探求している。 その姿勢はまるでウィルコの『ヤンキー・ホテル・フォックストロット』(02年)やレディオヘッドの『キッドA』(00年)に通じるものがある。そしてブギーなギターや裏声のヴォーカルは、もし80年代もののミックス・テープを作った時にプリンスとディーヴォの間に挟むとしっくりくるーーそんな感触だ。フェンダーローズ・ピアノから紡ぎ出されるコード、ネス湖のネッシーのような迫力を感じさせるスライド・ギター、そして13分にも及ぶフィナーレ。これらがアルバムを織りなす要素だ。もちろん、クラシック・ロックの定義において、ウィルコやレディオヘッド、プリンスはまるで関係のないアーティストではある。しかしこのアルバムで、マイ・モーニング・ジャケットがその定義を書き換えようとしているのではないだろうか。

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