ララバイ・アンド… ザ・シースレス・ロアー

ツェッペリンの再結成は誰もが望むところだが、ロバート・プラントの抵抗は明白だ。2007年のアリソン・クラウスとのコラボ作品『レイジング・サンド』、元カノのパティ・グリフィンとのプロジェクトで自己改革、過去最高の作品を作り上げた。最新作は、自らのバンド、ストレンジ・センセイション(現在はザ・センセーショナル・スペースシフターズとして再編成)との2005年の作品『マイティ・リアレンジャー』で、ワールド・ミュージック・フュージョンに返り咲いている。カントリーで試した的を射た優美さはないが、これだけは真実といえるのは、過去10年でいちばんハードロックしていること。

本アルバムの主要曲「リトル・マギー」はアパラチアのフォーク・ソング(でブルーグラスの定番)を、ガンビア出身のバンド仲間ジュルデー・カマラのアフリカ風スペースファンク・グルーヴと、カントリー・ダンスにも適した“語り部のリッティ”というガンビア風フィドルで置き換えたものだ。よりヘヴィな楽曲はそれほど説得力はない。ピーター・ガブリエルがマスタリングを行ったハイブリッドともいえる曲「エンブレイス・アナザー・フォール」は、デザイナーズ・ホテルのロビーで流れるBGMのようでもあり、中途半端な「カシミール」のようでもあり。「ポケットフル・オブ・ゴールデン」は、ジミー・ペイジのレスポールのシュレッド・ギターも似合う『聖なる館』風ケルト調フォーク・ロック曲。プラントはアメリカーナへ回り道をしたが、おかげでより素晴らしく繊細なシンガーとなった。本作ではプログレッシブ・ロックのようなものに舞い戻っており、ツェッペリンのことを考えないではいられない。希望を持ち続けよう。

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