マンハッタン生まれのこのトリオのライヴに行ったことがあるならば、ヤー・ヤー・ヤーズの音楽を体験するには体を動かすことがいかに重要であるかがわかるだろう。しかし3枚目のアルバム『イッツ・ブリッツ!』では、バンドのギター・ヒーロー、ニック・ジナーによるザクザクしたリフ・サウンドが新しい衝撃を与えている。それは、「ヘッズ・ウィル・ロール」のベースとキーボードのうねり、「ゼロ」のブルッとくるシンセ、そして「ドラゴン・クィーン」の妖しげなファンク・グルーヴに乗せたカレンOの歌声で聴かれる。ヤー・ヤー・ヤーズは、トーキング・ヘッズや本作の共同プロデューサー、デイヴィッド・シーテックがギタリストを務めるTVオン・ザ・レイディオの流れをくむニューヨークのダンス・パンクの伝統に則っているが、そのなかでも肝心なのは彼が発散している熱気だ。これまでカレンにつきまとっていた、謎めいた冷たいイメージが和らいだ。ケルト・ミュージック風の「スケルトンズ」や「リトル・シャドウ」にはU2風の壮大さが感じられ、センセーショナルな曲にもロマンティシズムが感じられる。「ゼロ」で“シェイクして/太陽へのはしごのように”と叫ぶカレンOは、ディスコの心地よい精神にどっぷりと浸かっているようだ。

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