“俺の元気なホワイトボーイ・ブルース”とキッド・ロックは歌う。現在44歳の彼は、懐かしげに過去を振り返り、時の移り変わりを見守ってゆく。“歳をとるのは止められない”と嘆いていても、本作の力強いロックンロールは、それとはまた別のストーリーを語る。キッドは優雅に年齢を重ねようとは思っていない。彼は喜んで、これまでどおりの強情で率直な自分を披露する。

 本作は、ボブ・シーガーの「ナイト・ムーヴス」を彷彿させるタイトル・トラック「First Kiss」で幕を開ける。この曲でキッドは、若い頃に“ラジオから聞こえてくるトム・ペティ”の曲で楽しんでいたと告白する。フィドルとオルガンのバラード「Jesus and Bocephus」では、以前彼のアルバムに参加した“Bocephus”ことハンク・ウィリアムズ・ジュニアが、救世主の隣に堂々と控えている。

 本作のボーナス・トラックは、センチメンタルな彼を好むか短気な彼を好むかで、修正済みの曲(デジタル配信)か過激なままの曲(アルバム収録)かを選ぶことができる。曲自体は美しいアレンジの失恋ソングで、「Say Goodbye」はシーガーによる胸を打つ歌詞、「FOAD」は“Fuck Off and Die”の略語でキッドによる辛辣な歌詞だ。

『FIRST KISS』にそれほど驚きはない。というのも、本作収録の曲はいつものキッドらしい音楽ばかりだからだ。派手なギターとドラム、キャッチーなサビとしゃがれたヴォーカル。ヘヴィな「Ain't Enough Whiskey」では、“何が正しいのかわかってる”と彼は宣言する。ここまでのエネルギーと楽しさと確信を持って提供された音楽に、議論の余地はない。

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