デュエッツ:リワーキング・ザ・カタログ

 デュエットアルバムというのはあまり考え込むことなく、短時間のセッションで作られることが多い。が、ヴァン・モリソンの場合はそうはいかない。『デュエッツ:リワーキング・ザ・カタログ』は、彼のほかのプロジェクト同様、少々気難しくてエキセントリックなアルバム。輝かしいゲスト陣を起用しているものの、自らのグレイテストヒッツを飾り立てるためではない。使用される楽曲のほとんどは、見過ごされているアルバムから掘り起こしたものだ(ちなみに『ムーンダンス』や『アストラル・ウィークス』からは収録されていない)。彼のパートナーとなっているのはスティーヴ・ウィンウッド、メイヴィス・ステイプルズ、タジ・マハールといったベテランから、ナタリー・コール、マーク・ノップラー、マイケル・ブーブレといった意外なメンバーまで。彼らはヴァンの要求に応え、筋金入りのファンにしか知られていない楽曲を救済する手助けをしている。

 本作はボビー・ウーマックとレコーディングした情熱的な楽曲「サム・ピース・オブ・マインド」で始まり、70年の「イフ・アイ・エヴァー・ニーデッド・サムワン」ではステイプルズも生々しく年輪を感じさせる歌声を聴かせる。「アイリッシュ・ハートビート」でのノップラーの声とギターは完璧にこの曲になじみ、「ハイアー・ザン・ザ・ワールド」でのジョージ・ベンソンのスムーズ・ジャズふうなアレンジは曲に高揚感を与える。ハイライトは、シンプリー・レッドのミック・ハックネルとのデュエットだ。74年のカルトアルバム『ヴィードン・フリース』からの「ストリート・オブ・アークロー」に輝きを与えるハックネル。才気溢れるモリソンのみが創造し得た素晴らしい曲となっている。

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