カントリーとクラシックロック、ジャムバンドの要素を兼ね備え、それらを縦横無尽にクロスオーヴァーしていく魔術師たち、それがザック・ブラウン・バンド。フロントマンはスムーズな中音域のテノールで、その声には説得力があり、木こりふうのあごひげは常に整っている。おそらく彼らの絶対的な好感度を除いては、ザック・ブラウン・バンドにケチをつける理由はひとつもない。彼らの4作目は、70年代のフィラデルフィア・ソウル、昔懐かしいゴスペル、ケルトのフォーク、メタル、レゲエ、ジャズといった多様なスタイルを取り上げていく。まるで音楽紹介バンドといったところだ。

 かき鳴らされるバンジョーが印象的な「Beautiful Drug」は、薬を恋愛のメタファーとして使用したアリーナ栄えするポップ。クリス・コーネルがゲスト参加した「Heavy Is the Head」にはハードロック色が加わっていて、その歌詞にはディープ・パープル「スモーク・オン・ザ・ウォーター」が取り入れられ、またシェイクスピアの『ヘンリー五世』も誤った形で引用されている。

「Castaway」ではジミー・バフェットふうに“ビーチの生活は最高”とのたまい、「Homegrown」ではありふれた小さな町に住む人間のプライドを歌う。ただ意外なのは、本作唯一のカヴァー曲であるジェイソン・イズベルの「Dress Blues」。カントリー作品によく見られる軍隊へのトリビュートではあるものの、まれな深みを備えている。ブラウンはイズベルの歌詞の要となる“Hollywood war”を“God-awful war”というフレーズに変えてはいるが、その深遠さを見事に強調する。このような作品を提供できるポップスターは、これからも多くの作品を提供すべきだ。

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