ニューポートのマイルス・デイビス 1955-1975: ブートレグ・シリーズVol.4

 1944年にニューヨークに移り住んだマイルス・デイビス。それから彼は5年ごとに新たな音楽の反乱を扇動していった。今日、我々が好んで聴いているどのジャンルにも彼の広範な影響が見られる。その理由は、デイビスが弾いた音と同時に弾かなかった音でも我々を魅了する珍しいアーティストだったからだ。彼はB.B.キング同様、自らの音色が他の間抜けどもの音楽よりも効果的にオーディエンスを圧倒することを知っていた。

 特に69年から75年におけるマイルスは、履いていたピンプシューズを変えるよりも頻繁にスタイルを刷新し、変化させていた。演奏を開始し、音量を上げ、勢いに乗ると、あらゆる音楽の未来を自らの音楽に取り込んでいった。生涯を通してジャズやロック、R&Bから吸収したのはもちろん、それらから発展してゆくパンクやヒップホップ、トリップホップ、ジャングル、ダブステップやEDMまでを己の養分とした。

 本作に収録されるのは、世界中で開催されたニューポート・ジャズ・フェスティバルでのコラボレーションを通じて、リアルタイムで進化していく彼のライヴ・パフォーマンス。デイビスのアフロ・フューチャリスティック・アシッド・ファンク時代に魅了されたファンにとっては、73年にベルリンで行われたライヴが特に興味深いだろう。このライヴ、シカゴ出身のブルース急進主義者であるピート・コージーのすさまじいギター演奏をフィーチャーしたものとなっている。“まずは演奏して、それから何ていう曲なのか教えてやるよ”と彼はよく言っていた。それで、いつになったら教えてくれるんだい?

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