インディロックのファンたちは、密やかに狂っていくポップが大好きだ。そんな彼らにとって、マック・デマルコはヒーローである。初期のベックにあったカジュアルさと上品さを兼ね備えているデマルコは、乱雑なガラクタを70年代ソフトロックのクリーミーなサウンドへと変えることができる。彼のメロディとスライドギターは、曲の間中、ゆらゆらとよろめき跳ね回る。

 2012年以来、4枚の作品をリリースしてきたデマルコ。このカナダ人シンガー・ソングライターは、特に一か八かの勝負をすることもせず、その楽曲のレベルを上げ続けてきた。今回の8曲入りミニアルバムは、そんな彼が最も巧妙に作り上げた作品と言えよう。歌詞は失恋や切望に満ち、デマルコのヴォーカルとギターはメランコリーなキーボードの音の合間をすり抜けていく。まるでその姿は、カーテンで締め切られた部屋のなかで太陽の光を探し求める猫のようだ。タイトルトラックで消えかけている愛と信頼について思い悩みながら、“彼女のドアを叩くのは誰なんだ?”と問いかけるデマルコ。“きっと彼女の愛する他の男に違いない”。

 デマルコ曰く、本作は普遍的なポップに挑戦したアルバムだそうだ。結局、誰もが愛を見つけ、愛を失う。時には彼の歌詞があまりにありふれている時もある。“本当なんだ、僕は彼女をずっと待ち続けていた”のようなフレーズはとてもわかりやすいが、少し退屈でもある。だがそんな彼の長所が生かされると、心締めつけるような痛みと温かさといった、彼の楽曲の魅力が最大限に発揮される。

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