ザ・ウィークエンドことエイベル・テスファイは、ミステリアスなポップの革新者だ。2011年に自主リリースしたミックステープ3作品(後に『Trilogy』としてリリース)と、メジャーデビュー作『キッスランド』は、夜明け前のもやに浮遊しているかのような不思議な作品だった。

 ザ・ウィークエンドは、豪華に飾られた自らの秘密基地にリスナーを誘い込むことで、大勢の狂信的なファンを作り出した。しかし最近になって、彼はメインストリームに浮上。2014年のヒット曲「ラヴ・ミー・ハーダー」ではアリアナ・グランデとじゃれあうようなデュエットを披露、またテイラー・スウィフトの新しいセレブの親友としてステージに立っている。

 ザ・ウィークエンドのセカンドアルバムとなる本作は、トップ40を意識した作品だ。スウェーデンのティーンポップの魔術師マックス・マーティンによって完璧にプロデュースされた「Can't Feel My Face」や、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』のサウンドトラックに収録されたバラード「アーンド・イット」のように、すでにスマッシュヒットしている楽曲では見事にそのメジャー感を披露している。

 時にこのアルバムは、リアルなドラマも描き出す。「In the Night」は一見、肉食系美女に対する賛歌のようだが、歌われている女性は実際には虐待の犠牲者で“痛みを消すために踊っている”。「Prisoner」ではラナ・デル・レイと手を組み、究極の悲しみを表現するザ・ウィークエンド。“空っぽで冷たい人生の中毒になっている”と彼らは歌う。本作は、思いもよらない形で、我々を熱中させるアルバムとなった。

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