アデル ロングインタヴュー(後編):子育て、ダイエット、そして『25』の制作秘話まで

Photograph by Theo Wenner

『25』のインスピレーションを一言で表すのは困難だが、マドンナの『レイ・オブ・ライト』がそのひとつであることは間違いない。

「私があのアルバムを大好きな理由はなんだか知ってる?」アデルはこう続ける。「あれはマドンナの第一子出産後初のアルバムで、私はあれが彼女の最高傑作だと思ってる。出産後、私はホルモンの変化に悩まされてたこともあって、すごく堕落した生活を送っていたの」当時はアーティストとしての自分のことなど考える余裕もなかったと彼女は話す。「やる気がわかないまま、どんどん時間が過ぎていった。もう復帰できないんじゃないかって思い始めてた時に、『レイ・オブ・ライト』に出会ったの」アデルはそのアルバムを何度も繰り返し聴き、特に『フローズン』に魅了されたと話す。「あの曲は私に、アーティストとして再スタートする勇気を与えてくれたの」

アンジェロが昼寝の時間を迎える頃、アデルは車を道の脇に停めて、お休み前のFaceTimeコールを送った。(『ハロー』のビデオとは違い、実生活ではガラ系の携帯は使っていないようだ)過去に息子の写真を撮影したイギリス人パパラッチを訴えたこともある彼女は、筆者に息子の見た目について記述しないことを約束させた。(その姿を確認できたのは一瞬だったが、とても愛らしかった)

出産からしばらくの間、彼女は息子の名前さえ公表しなかったが、片方の手にその名前のタトゥーを入れた。もう片方の手に刻まれた”PARADISE”の由来を尋ねると、彼女は少し顔を赤らめてこう答えた。「アンジェロは私にとってのParadiseだから」(彼女の背中には3匹の大きな鳩のタトゥーも見られる)ラナ・デル・レイが同じく手に”paradise”というタトゥーを入れていることを、アデルは後になって知ったという。彼女はおかしそうにこう話す。「彼女は私が大ファンなんだと思ったでしょうね」『ボーン・トゥ・ダイ』のコーラスを歌いながら、彼女はこう続けた。「もちろん私も彼女の音楽は大好きだけど、タトゥーを真似るほどではないわ」

「図書館は楽しかった?」彼女は携帯の画面に映った男の子に話しかける。「何の本を読んだの?」

象やエルモ、チョコレート、マカロニ&チーズなど、アデルがアンジェロを寝かしつけるまで、おしゃべりの話題は様々だった。「赤いボタンを押す?それともピーナッツ?赤いボタンがおすすめよ」

「アンジェロはまさに私にとっての天使よ」彼女はこう話す。「息子と過ごす時間は、私に自分の好きな部分を再発見させてくれるの。あと、面と向かって私の『ノー』と言える唯一の人物でもあるわ。私は完全にあの子の言いなりなの。仕事の場でふんぞり返ってる私を知ってる人たちは、その様子がおかしくて仕方ないみたい」

仕事でアンジェロのそばにいられないときは罪悪感を感じるという。「いつも申し訳なく思ってる」そう語る彼女だが、ケイト・ブッシュのカムバックコンサートには大いに刺激を受けたという。「あのショーを見て、一刻も早くアルバムを完成させたいって思ったの」彼女はこう続ける。「またステージに立ちたいって思ったのよ」ケイト・ブッシュのカムバックを後押ししたのは彼女の10代の息子だったことについて、彼女はこう話す。「あのコンサートは彼女の息子の存在があってこそだった。でもショーの後、私は息子が16歳になるまで、シンガーとして自分の姿を見せることができないなんて我慢できないって思ったの。私は自分の成し遂げたことを誇りに思っているもの。でも、アンジェロを産んだからこそ、私はそう思えるようになったの。誰もが何かを成し遂げたいと願うけれど、ほとんどの人はいろんな理由でそれを実現できずにいる。だから私は自分が置かれている環境にすごく感謝しているし、途方もない成功を収められたことを、とても幸運に感じているの」

Translation by Masaaki Yoshida

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