ローリングストーン誌が選ぶ「2015年のベスト・ミュージック・ビデオ」トップ10

6位 ケンドリック・ラマー『Alright』

監督:コリン・ティレー&ザ・リトル・ホーミーズ
コリン・ティレーは20代に入ってから、ニッキー・ミナージュの『Anaconda』やDJキャレドの『No New Friends』のような、ド派手なヒップホップ・ビデオを中心に数多くの作品を手がけてきた。しかし、ケンドリック・ラマーの『Alright』では虚飾を削ぎ落としている。一流アーティストによる、近年最も野心的なアルバムの1枚にふさわしい内容だ。約7分に及ぶこの作品で、ラマーはカリスマ性と脆さを併せ持つスーパーヒーローに扮している。町中を浮遊し、助手席に上機嫌の子供を乗せながら、駐車場でドーナツターンをキメる。『Alright』の編集、音響、ビジュアル・イメージを担当した映像作家カヒール・ジョセフ(ラマーのかつてのコラボレーター)の助力もあるが、ラマーの複雑で矛盾に満ちた美しいビジョンを具現化するというチャレンジを、ティレーは見事にやり遂げた。


5位 ウィル・バトラー『Anna』

監督:ブラントリー・グティエレス
アーケイド・ファイアのメンバー、ウィル・バトラーのビデオ『Anna』は、ファットボーイ・スリムとスパイク・ジョーンズの『Weapon of Choice』のコンセプトを、エマ・ストーンとクイーン・メリー号、マッチョな水兵たち、そしてライアン・ヘフィントンの天才的な振付によって、2015年版にアップデートしたような作品だ。ヘフィントンの最も有名な作品は、ダンサーのマディ・ジグラーと組んだシーアのビデオ3部作である。ヘフィントンは、古き良きハリウッドを思い起こさせるこの歌&ダンスに自分らしさを加え、パフォーマーたちの今にも爆発しそうな狂気を引き出した。また、ストーンが狂ったようにピアノを演奏するフリをしたり、船が揺れるなか口に札束を詰め込んだりして、とても楽しい。実力のある人気スターが、抑制することなく伸び伸び振る舞う姿を見るのは爽快だ。


4位 ラッドキー『Glore』

監督:ニコス・リヴシー
2013年以降、ニコス・リヴシー監督はアクの強いアニメーション・ビデオを、年1本ペースで製作してきた。ハードロック・トリオ、ラッドキーのために製作したこのビデオは、懐かしいストップモーションのクレイアニメ作品だ。このジャンルで最も有名な前例は、グリーン・ゼリーの1993年のビデオ『Three Little Pigs』だが、『Glore』は殺気立ったスピード感とユーモア、ブラックライトの視覚効果をさらに強めている。80年代、90年代のポップカルチャーを代表する、ヒット作の数々をノコギリで切り刻んでいくのだ。しかし、アイデアは下品であるものの、『Glore』はテクニカル面では複雑な手法にチャレンジしている。

Translation by Sayaka Honma

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