ショーン・ペンが語る:麻薬王エル・チャポとの会談(前編)

私たちがロサンゼルスを発ったのは午前7時だった。何台かのSUVが止まっている空き地に着いたとき、ダッシュボードの時計は午後9時を指していた。数名の男たちがたむろしている。なだらかな丘の上に風雨にさらされたバンガローがいくつか見える。私はトラックを降り、荷物を取るためにトランクまで歩いて行ってもいいか、許可を求めて男たちの顔を見回す。頷きが続く。私は動く。すると……そこに彼がいた。トラックのすぐ横だ。世界で最も有名な逃亡犯、エル・チャポだ。私の頭に即席のパラパラ漫画のように、これまで私が見てきた何百もの彼の写真やニュース番組の報道が浮かぶ。彼が本物であることは疑いようがない。彼はカジュアルな柄物のシルクのシャツを着て、プレスされたブラックジーンズを履いている。追われている男性としては極めて身だしなみがよく、健康に見える。彼はケイトのために車のドアを開けると、彼女がまるで大学から帰省した娘であるかのように迎える。この瞬間まで遠く離れてしかやりとりするチャンスがなかった人物に対して、温かな愛情を直接示すことは彼にとって非常に大切なことのようだ。彼女に挨拶をしてから、彼は私に向かって好意的な微笑みを見せ、手を差し出す。私はその手を握る。彼は私を引き寄せ“親友”向けのハグをする。そして私をじっと見ると、私の耳には早すぎるスペイン語で長々と歓迎の言葉を述べる。私は冷静さをかき集め、スペイン語で彼に説明する。私のスペイン語はおぼつかず、その日、夜が更けるにつれて私はケイトの通訳に頼ることになった。私が話し始めると、自分の挨拶が理解されていなかったことに彼は初めて気がつく。彼は自分の仲間に冗談を言うと、私がスペイン語を話すと思いこんでいたこと、そして自分にこんなに長い挨拶をさせるほど、私がつかの間呆然としていたことを笑う。



10月2日の筆者と当時逃亡犯だったエル・チャポ・グスマン。この写真は目的を証明するために撮影されたものである。長い夕食と会談の後、ペンからの正式なインタビューの申し出をチャポは受け入れた。

Translation by Yoko Nagasaka

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