ビートルズが楽器を交換した名曲10選

Photo: John Pratt/Getty

レコードを出すたびにビートルズは創造的な脱皮を遂げてきた。数十年経った今でも、『リボルバー』から『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』そして『ザ・ビートルズ』(通称ホワイト・アルバム)までの2年の飛躍を読み解くことは依然として難しい。

メンバーたちも常にバンド内でのそれぞれの役割を拡大し続けてきた。ポール・マッカートニーがドラムセットに向かい、あるいはジョン・レノンのリード・ギターがフィーチャーされているビートルズの代表曲は驚くほど多いのだ。

こうしたディティールがビートルズの変革にとって不可欠で、ホワイト・アルバムの名曲『マーサ・マイ・ディア』ではマッカートニーのワンマン・パフォーマンス、サイケな白昼夢『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』ではレノンによる当時無名の鍵盤楽器『メロトロン』の実験があった(彼がこの素晴らしい楽器を導入しなければ、キング・クリムゾンが『クリムゾン・キングの宮殿』でプログレ・ムーヴメントを確立しえたと誰が言えるだろう)。

五人目のビートルズとも言われた、プロデューサージョージ・マーティン氏を追悼し、ビートルズが担当楽器を替えた楽曲の中から最も興味をそそる10曲を振り返ってみよう。

『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』


ホワイト・アルバムのセッションは張り詰めていて、全体にバラバラだった。スタジオ内のヨーコ・オノの存在に、ジョン以外の誰もが苛立っていた。そんな中、長年エンジニアを務めてきたジェフ・エメリックは、バンドの言い争いに嫌気が差し、レコーディングの途中で降りてしまった。ビーチ・ボーイズへのオマージュであるマッカートニーの『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』のレコーディングは特に複雑なものになった。リンゴ・スターが一時的にバンドを脱退してしまったのだ。そのおかげで残った3人で不足を埋める羽目になった。ハリスンとレノンの2人で追加のベースをオーバーダブして、コンポジット・トラックに肉付けした。彼らはドラムも追加した。マッカートニーの緊張感あふれるドラムが「ウーウー」といったハーモニーの途中に大音量でミックスされている。

聞いてみるとリンゴ不在のビートルズがリンゴ独特の転がるようなフィルインを真似ようとしているのが分かる。だが、そこに同じように洗練された輝きはない。リンゴはビートルズで最も影響力が弱いと常に多くの批判に晒されてきたが『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』では彼の存在がどれだけ大きかったかが証明された。彼がいなくなるまでわからなかったのは皮肉だ。数週間後にスタジオに戻ってきたリンゴは、自分のドラムセットが花で飾られているのを見ることになる。

Translation by Kise Imai

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