『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が絶大な支持を集める理由

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』BB-8とデイジー・リドリー(David James..© 2015 Lucasfilm Ltd. & TM. All Right Reserved.)

『新たなる希望』を再生してみせたJ・J・エイブラムスの実力

皮肉な話だが、『スター・ウォーズ』シリーズにおいて最も印象的なシーンは、実際の『スター・ウォーズ』には登場しないとされていた。

そのシーンは、荒れ果てた近未来のロンドンを舞台にマシュー・マコノヒーとクリスチャン・ベールが巨大な竜に戦いを挑む、2002年公開のファンタジー・アドベンチャー『サラマンダー』の冒頭20分前後に登場する。その場面では、地下のシェルターで身を潜めながら暮らす生き残った人々が、『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』のクライマックスのバトルシーンを再現し、子供たちを楽しませている。しかし、そこにルーク・スカイウォーカーやダース・ベイダーといったキャラクターの名前が登場することはない。シス卿を思わせるベールが演じるキャラクターは、自らを「暗黒の騎士」と呼ぶ。子供たちはライトセーバー代わりの木刀が重なり合うたびに大きな声を上げ、ベイダーがルークの父親だと知って目を丸くする。彼らは派手な特殊効果、クリスマスに放送される特別版、そしてトレーディングカードのアプリも必要としていない。ブラスターを先に放ったのがハンだったかどうかなど、子供たちにとってはどうでもいいことなのだ。

このシーンが印象的なのは、ジョージ・ルーカスがこだわったスター・ウォーズの魅力を描いているからだ。舞台が薄暗い洞窟でも、あるいはパインウッド・スタジオの巨大なグリーンスクリーンの前であったとしても、『スター・ウォーズ』の最大の魅力はストーリーそのものではなく、それ以上に雄弁な演技だった。『フォースの覚醒』が歴史的な興行収入を記録することができたのは、『サラマンダー』で描かれた『スター・ウォーズ』の本来の魅力を取り戻すことに成功したためだ。『スター・ウォーズ』は優れているから人々に愛されるのではない。多くの人々に愛されているからこそ、『スター・ウォーズ』は優れているのである。

1977年に公開された第1作は様々な面において画期的だったが、その大部分は優れたデザインによるものだった。ルーカスが描いた「宇宙の遥か彼方」という舞台は、誰もが一度は胸を躍らせる宇宙にまつわるおとぎ話の数々に、自身の想像力を投影することによって生み出された。その魔法についてはすでに語り尽くされている。『新たなる希望』は、『アラビアのロレンス』、『フラッシュ・ゴードン』や『バック・ロジャース』といったスペースオペラ、そして黒澤明の『隠し砦の三悪人』のストーリーを組み合わせたものだとされている。ジョーゼフ・キャンベルは、物語文学のルーツは文明の黎明期にまで遡るとしたが、ルーカスは20世紀の作品から得たインスピレーションを、キャンベルが築いた鋳型に落とし込んでみせた。1977年の『スター・ウォーズ』公開数日前、ロサンゼルス・タイムズに掲載されたインタビューで、ルーカスは次のように語っている。「長く語り継がれてきた神話やおとぎ話の現代版と呼べるようなものを作りたかった」

Translation by Masaaki Yoshida

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE