音楽史上最高のプログレ・ロック・アルバム50選

30. U.K.『U.K.(憂国の四士)』(1978年)

プログレ信奉者たちは、U.K.のことを今までで最も有望なスーパーバンドのひとつであると期待していた。バンドがキング・クリムゾンやイエス、ロキシー・ミュージック、ソフト・マシーンの元メンバーで結成されていたからだ。しかし、彼らはデビュー作でプログレとジャズ・フュージョンを激しくメロディックに融合した音楽を作り、自己満足に陥らずにオーケストラのような複雑さを発揮させることだけで3年を過ごした。エディ・ジョブソンのクルクル回るようなキーボードと涙を誘うような電子ヴァイオリンがアラン・ホールズワースの激しいギターとふざけた決闘をする一方で、ジョン・ウェットンの鳴り響くようなベースがビル・ブルーフォードの小刻みなドラム演奏と上手くかみ合う。アルバムのリリース後、ブルーフォードとホールズワースが手の込んだ次回作の制作に関心がないことを表明し、バンドを去っていった。「アメリカは新しいELP(エマーソン、レイク&パーマー)を必要としているという理屈だった」と当時のブルーフォードは説明した。「U.K.の半分(そう感じていた)、俺とホールズワースはアメリカにはホールズワースが必要だと考えた」。残りのメンバーはデビュー作のグルーヴをもう一度完全に表現することができず、1980年にバンドを解散した。なお2012年、ツアーを行うためウェットンやジョブソンとともにバンドを再結成した。by J.W.

29. ドリーム・シアター『メトロポリス・パート2:シーンズ・フロム・ア・メモリー』(1999年)

ラッシュが『西暦2112年』のスタイルであり続けることを望む人たちにとって、ドリーム・シアターはここ数十年の間、その希望に応える選択肢のひとつであり続けてきたが、このアルバムは複雑なコンセプト・メタルのプログレ作品であることを堂々と見せつけるものだ。本作品は1992年に発表された9分を超える長さの曲「メトロポリス」から派生し、死んだ女とその女を殺害した犯人かもしれない男についてという曲本来の構想を広げることにより、ドリーム・シアターはドラマの見せ場のクライマックスに到達した。複雑で高度な作品である80分にわたる第二幕『メトロポリス・パート2:シーンズ・フロム・ア・メモリー』は、新しい登場人物の前世退行と超常体験を調査することにより殺人事件の謎を掘り下げる9曲で構成されている。予想以上に混乱したストーリーを補強するために、バンドは初期のラッシュやフェイツ・ウォーニング、クイーンズライチなどの影響を受けた壮大な楽器の演奏手法を皆で作り出した。「俺たちはずっとコンセプト・アルバムを作ってみたかった。だから試してみようってことになったんだ」と、ギタリストのジョン・ペトルーシは自身のウェブサイトに記した。by J.W.

28. オーペス『ブラックウォーター・パーク』(2001年)

本アルバムのタイトルは70年代初期に活動していたドイツのプログレ・バンド、ブラックウォーター・パークにちなんだもので、スウェディッシュ・デスメタルの巨匠であるオーペスが、自分たちの音楽のなかに長い間隠れていたプログレッシヴの素質を初めて全面に打ち出す第一歩となった。本作はポーキュパイン・トゥリーのスティーヴン・ウィルソンによるプロデュースで、「ザ・ドレイプリィ・フォールズ」や「ザ・レパー・アフィニティ」、12分の厭世的な表題曲のクライマックスといった壮大で変化に富んだ試みに、キーボードやメロトロン、バック・ヴォーカルのエッセンスを付け加えたほか、オーペスのリーダー、ミカエル・オーカーフェルトによって、キング・クリムゾンやピンク・フロイドのようなメロディックでムードのある側面にオーペスの複雑で陰気なリフと彼の不気味なグロウルが吹き込まれている。「俺はこのアルバムを憂うつなものとは呼ばない。ただ真っ黒なだけなんだ。暗闇のようなものですべてが覆われているみたいだから」と、オーカーフェルトはアルティメット・メタル誌に語った。ウィルソンはこれと同じくらい立派なほかの2枚のアルバム(2002年の『デリヴァランス』と2003年の『ダムネイション』)の制作についても助言を行っているが、オーペスをメタル界の頂点に君臨させた要因はこの『ブラックウォーター・パーク』である。by D.E.

27. スーパートランプ『クライム・オブ・センチュリー』(1974年)

バンドは前2作が大敗を喫したことで、オランダの大富豪から融資を受けてよりわかりやすくポップな曲を収めたアルバムを制作するために、自分たちのプログレッシヴに対する野心を抑圧させたことは有名な話だ。このアルバムが「ブラッディ・ウェル・ライト」や「ドリーマー」などのヒット曲を生み出し、2000万枚を超える売り上げを記録したおかげで、スーパートランプはアメリカで大ブレイクした。ロジャー・ウォーターズの傲慢さを取り除いたピンク・フロイドのような『クライム・オブ・センチュリー』は、思春期の不安(「貝殻のひとりごと」)や大人の疎外感(「ルーディ」)と怒り(「アサイラム」)をテーマにしている。残念ながら、感情むき出しのロジャー・ホッジソンとよりロックっぽいリック・デイヴィスというスーパースタンプの2人の作曲家にとって、このアルバムが共通の方針で作った最後の作品になってしまった。そのため、本作品はホッジソン曰く、「ひとつの団結した組織として協力することができたバンドにとっての絶頂期」を象徴しているとのこと。by R.G.

26. ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター『ポーン・ハーツ』(1971年)

ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターのサード・アルバムは、キング・クリムゾンのギタリストであるロバート・フリップをフィーチャーしたことで、プログレ・ファンを味方につけた。しかし、『ポーン・ハーツ』は慎重に聴き入るタイプの聴き手にさえ、混乱するほどワクワクするような刺激的な体験を与える作品になった。「マン・アーグ」では、ヴォーカルでアイデア量産者のピーター・ハミルが儀式のようなキーボードと劇的に変化するドラムで芝居じみた才能をひけらかし、サックスとキーボードの抽象概念を高める6分間に展開する途中の中間セクションを駆け抜けながら「どうすれば自由になれるのか!(How can I be free!)」と悲痛な声をあげる。23分にわたる長編曲「ア・プラグ・オブ・ライトハウス・キーパーズ(メドレー)」は、広がるようにゆったりとした間奏と自由に奏でられたソロ、耳障りな音の転換や「あなたは沈んでいく大型帆船の円材の骨組みを見る時/あらゆる古代神話の核心が自分の方にまっすぐ向かっているのではないかと思い始めるだろう(When you see the skeletons of sailing-ship spars sinking low/You’ll begin to wonder if the points of all the ancient myths are solemnly directed straight at you.)」といった歌詞によって、キング・クリムゾンがラモーンズになったのではないかという印象を与える曲だ。この男たちは同時にあらゆる神話を吟味し、その威厳を損ねないように何かを足したり、簡潔に表現したりせずに純粋なプログレの魂のような音楽を生み出した。by J.D.

Translation by Deluca Shizuka

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE